秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

2018-01-01から1年間の記事一覧

ゆりかごの中のぼくら

三島由紀夫の『文化防衛論』が出版されたのは、1969年。執筆はその前年のことだ。 当時、世界に広がり、日本にも怒涛のように押し寄せた学生運動の潮流に危機感を抱いた三島は、左翼を含め、この国に蔓延している欧米主義、明治以後の日本の極端な欧化政策に…

大人の姿勢と知性

子どもであった頃の記憶を消して、大人のふりをする。 子どもの頃の満たされなかった欲求感情を引きずって、子どもであった頃の純真さを持ち越していると勘違いする。 思春期、青年期の子どもたち、若者たちが一番疎ましく思うのは、そんな大人たちだ。 昨今…

I have a dream

「私には夢がある…」。その言葉で始まった、キング牧師の演説は、アメリカ公民権運動を強く牽引する力になった。 「私には夢がある…」。その言葉が生んだ行動は、実現不可能を人々の小さな力の結集が可能にすることを証明した。 ぼくは若い頃から、「それは…

まやかしの日常

聡明な人たちは気づいている。ぼくらは日常を生きてはいない。 それは、日常というものが実は存在しないからだ。 聡明でない人も、直感として、本当は察知している。 日常と思い込もうとし、思い込むことによって、初めて日常が成立し、維持されるていること…

自問と反省

ぼくは中学生の頃から、大人たちが決めたルールや決まり事といったものに一言二言、場合によって三言以上意見をいう癖があった。それを疑問も持たず受け入れている同世代ともうまくはやれなかった。 唯々諾々と大人の考えや意見に従うという子どもではなかっ…

忘れてはいけない感動と課題

あらかじめ約束されていたかのように、ぼくはまた東北のいろいろな人たちと、表に見えていない震災後の現実と再び出逢っている… 前回の弾丸ロケハン、それに続く撮影。そして今回の弾丸ロケハン。あの震災のときと同じように、回を重ねる毎に、見えていなか…

ありがとうございました。

ぼくらは常に主役ではない。 ぼくらの仕事は、悲嘆や恩讐や後悔や無念…それらを乗り越え、回復や挑戦へと向かい、喜びや感動、新しい世界と出逢う人々の姿を知り、学び、その人生の傍らから、そこにある人の思いを整理し、伝えやすい形とし、そこから見える…

我なすことは

我なすことは我のみぞ知る…そう言葉を遺したのは龍馬だ。 何につけ、これを実現しよう、達成しようと心に誓った思いは、そしてその行動は、余人に理解できるものではない。それが社会的なことであればなお、真意や思いの誠は容易に理解されないものと相場が…

とどまらない予感

東北でも北に行くほど、訛りが強くなる。 その岩手訛りを聴きながら、この音を直に耳にするのは、久し振りだなと心の中で、ぼくはつぶやいていた。 相馬からトンボ返りで、飯田橋のKADOKAWAホールで国指定無形文化財岳神楽、別名早池峰神楽の会長と打ち合わ…

仮説の証明

人というものの謎を解く。それがぼくらの仕事だ。 だが、人というのもの謎など解けるものではない。なのに、解けない謎に果敢に取り組み続ける。徒労ともいえるその命題から逃れられない。それがぼくらの仕事の姿だ。 仮説に基き、一定の答えを探り当てたと…

ポケットの小銭

立場(肩書き)が人をつくるとかつてはいわれた。 ちょっと頼りなく、あぶなかっしく思える人材でも、それなりの要職、責任を伴う肩書きを与えると、その役分に見合うように成長していく…というものだ。 確かに、自分の青年期から中年期を振り返ると、当たっ…

センス

会話としての外国語を習得することと文学や評論を外国語で学ぶことには大きな違いがある。 文学や評論を外国語で学ぶのは、外国語を習得することが究極の目標ではない。外国語の習得がなければ、海外の文学や評論、その他を理解することは、もちろんできない…

チコちゃんに叱られるの先

NHKの週末の高視聴率番組「チコちゃんに叱られる」。ご覧になっている方も多いはずだ。 NHKらしく、子どもから大人まで、だれでも楽しめる教養番組だが、この番組、じつは、世の中の常識とされているものの原理、原則、基本を問いかけ、常識ゆえに素通りして…

検察の誠

多くの日本人が知らない。そして、政界、法曹界の多くが知っている。 日本の司法、とりわけ検察には、青少年期から東大法学部進学のために勉学に励み、在学中または卒業後、司法試験を突破して、検事、検察庁高官、裁判官、最高裁裁判官になった熱心な創価学…

デラシネの旗

いま虎ノ門界隈を始め、港区、中央区、渋谷区など、都内主要区では大規模都市開発が進行している。 三井住友不動産や森ビルが競うように複合型高層ビルを建設し、これに合わせた道路整備事業も加速している。 ぼくの住む乃木坂、赤坂周辺も道路拡張工事とマ…

無恥の文化のいま

「こんな恥ずかしいことがよくできるなー」とか、「恥の上塗りをして、よく平気でいられるものだ」とかいった言葉をぼくらは口にする。あるいは、そういいたくなるような場面を目にする。 アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトが『菊と刀』を上梓した…

幻想としての国、社会

ぼくは、20年以上前からいっている。 国、社会といった公的概念は、人々が同じ幻想を共有し合うことで成り立っている。同じ規範、同じ倫理・道徳観を共有することで、法があり、法に基づき、社会制度やシステムが維持されているのだ。 欧米や中東など諸外国…

簡単な問い

国の豊さとは何を基準とするのだろう…。人の幸せの基準って何なのだろう…。世界の安定は何を目指せばいいのだろう。 簡単な問いに、ぼくらは確かな答えを持っていない。 国の豊かさを成長率やGDPが示す時代は、もう終わっている。成長を実感できるのは、限ら…

犬の遠吠え

高齢化の波と格差の波が同時に進んでいる…ということに、ぼくらはあまりにも無頓着だ。 江戸末期、西欧諸国が脅威とすら考えた、この国。西欧化しかり、軍事力の近代化しかり、敗戦後の高度成長しかり。 システム変更といえば聞こえはいいが、要は、外圧から…

ツケ

宮澤賢治は一度、現実から逃避したことがある。 父との確執から上京。信奉する法華経の勉強の傍ら、のちに発表される童話の多くをモラトリアムなその時期、書き綴った。 東京での生活苦と妹とし子が肺病にならなければ、きっとそのまま東京で過ごし、農業指…

あなた自身が

ぼくらは普段、憲法を意識していない。 人によっては、憲法の条文をまともに読んだことのない人もいるだろう。中学や高校で学んだはずなのだが、全く覚えていないという人もいるに違いない。 確かに、日々の生活で憲法を意識することも、憲法を知っていない…

少しずつ勝つ。

高校生のときだ。「北朝鮮のミサイルが日本の米軍基地に発射された!」というデマが流れたことある。 いまの福岡に住む人にはわからないだろうし、基地のある町に住んだことのない人たちにもわからないだろう。 福岡空港が板付空港といわれ、空港の半分が米…

だって、わたし、悪くないもん!

だって、わたし、悪くないもん! このところ、ぼくらの回りには、言葉にするにせよ、しないにせよ、そう思う人が増えているような気がする。 自分は悪くない。それは加害者ではないという主張だ。果ては、私は悪くない、ほかの誰かが悪いのだという被害者意…

傷のない腕に巻かれた包帯

ぼくは、もう10年ほど前から、ある評論本の企画を持っている。内容を検討しているときに、あの震災が起きた。 そして、その評論本の中で、描こうとしていたことの多く、ぼくらが取り戻さなくてはいけない課題をあからさまに震災が突き付けてくれた…と実感し…

きれいごとの増産

教育というのは、そもそも不遜なものだ。そういったのは、ルソーだった。 子どもを大人たちが求める人間に意図して育てる。それが教育の本質に過ぎない。ルソーはそう言いたかったのだ。 大人たちのつくった、家庭、地域、社会の規範や倫理、道徳に従うのが…

ようなもの、なるもの

30年…それは数字や文字にするとずいぶん長い歳月のような気がする。 だが、こうしてその歳月を生きてしまうと、なんとその短いことか、速いことか…光陰矢の如しというたとえが、年齢を重ねるうちに実感として染みわたる。 ひとつの仕事、一つの会社。そう…

申し訳ない

人を幸せにするのものはなんだろう…。 人権にかかわる映画や社会問題をテーマにした舞台や映画をつくってきて、福島というこの国や地方のあり方を問われる現実に向き合ってきて、いつもどこかにあるのは、そんな簡単で、一番難しい問いだ。 快楽度数、快感度…