秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

簡単な問い

国の豊さとは何を基準とするのだろう…。人の幸せの基準って何なのだろう…。世界の安定は何を目指せばいいのだろう。

簡単な問いに、ぼくらは確かな答えを持っていない。

国の豊かさを成長率やGDPが示す時代は、もう終わっている。成長を実感できるのは、限られた人々のものであって、成長による富の再配分が機能しなくなっているからだ。これはこの国だけではなく、先進国すべてに当てはまる。

アダム・スミスが描いた資本主義の理想は瓦解している。

人の幸せが所得の増加だった時代も終わっている。所得が増えても、実質所得は減少している。正社員雇用が増えたのは、非正規雇用者を正規雇用にみせるため社会保険加入を促進したからだ。非正規雇用の実態は増加すらしている。

そもそも、正社員雇用自体が、人を幸せにできるものかどうかも疑わしくなっている。離職者、転職者の増加や過労死がそれを示している。

世界の安定のために軍事バランスが必要だという主張もそれが幻想だと証明された。世界の富の82%をわずか1%の人間が独占している。貧困や差別が生むテロは核でも、軍事力でも抑止できない。

この国の20歳~40歳未満の死亡率のトップは自殺(自死)だ。重篤な病気でも、事故でもない。これから国を、社会を担う世代が自分の未来や将来に希望を抱けない国。

いま、希望を失わせる国、社会、大人の姿が毎日テレビに流れている。政治の場だけではない、朽ち果てたテレビの報道バラエティにも溢れている。

それを変えるのは自分たちだ。だが、希望の持てる国、社会にするための挑戦には、希望がいるのだ。

若い世代の希望を奪い、社会への信頼を失わせ、疑惑の中で自殺者まで出しながら、何の非もないがごとく、ふるまう厚顔無恥な対応は、いったいだれが許しているのだろう。

簡単な問いを持ったことのない大人たちが、まだ、この国には半数以上いるということだ。そんな大人たちが、また今日も、若い世代を苦しめていることにも気づけずに。