秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ロストケア

劇場で予告編を観たのは、昨年のことだった。上映されれば、必見だなと思いつつ、見逃していた作品。少し前、光文社に用件があり、その折、この原作が映画化された話は聞いていたが、出版社としては、ベストセラー作品でもなく、地味な作品だったこともあり…

悲しいときには微笑みを

このブログでも以前、紹介した。 近代朝鮮史の研究では第一人者だった、大学時代からの親友が昨年10月に急逝した。卒業後も連絡を取り合い、機会があれば会っていた貴重な友人だった。先月のお彼岸に、奴の遺稿をまとめた、研究書籍が明石書店から出版された…

ジャニーズジャパン

亡くなられた生物学者の藤田絋一郎さんや宮崎学さんと雑談していて、日本人の免疫力の低下や耐性の欠落の話で盛り上がったことがある。藤田さんとの雑談には、宮台真司さんも同席していて、藤田さんの話に共感されていた。藤田さんは回虫博士でよく知られて…

敗北のアップデート

統一地方選挙の前半戦が終わり、後半戦が佳境に入っている。この間、統一教会の関与が疑われる、子ども家庭庁が開庁し、旧態然とした少子化対策が打ち上げられ、敵基地攻撃能力配備などという無謀な防衛費増額など重要案件が内閣決議で次々に決定されている…

イニシェリン島の精霊

ある旧知の女性に言われたことがある。「あなたは、なぜ、そんなにアイルランド好きなの?」ぼくは、答えた。「わからない。なぜだかはわからないんだ。自分でもどうしてだろうと思う」いまでこそ、アイルランドは海外IT関連資本の進出で、経済的に先進国と…

あなたなんか、大嫌い!

社会に無関心であろうと、政治に興味がなかろうと、世界情勢と無縁だと思っていようと、人はそれらと無関係でいることはできない。ごくありふれたぼくらの日常も、それらと関係なく存在するのではない。興味のあるなしや関係性の自覚・無自覚とは無縁に、ぼ…

だれか書いてくれないかねぇ

残された者、生き延びている者には使命がある…またそう思わせる親友の訃報を知った。亡くなったのはひと月前。 大仰なことや派手なことが好きではなかった。だからだろう。葬儀もお別れの会もなく、身内での見送りだったらしい。突然の死だったこともある。 …

踏み絵を突き付けた銃弾

遠藤周作の小説「沈黙」。国内外で映画化・舞台化されて来たが、記憶に新しいのは、2016年公開された『沈黙 サイレント』(監督マーティン・スコセッシ 主演アンドリュー・ガーフィールド)だろう。※余談だが、この映画公開のあと、私は札幌駅の千歳空港へ向…

      ”Please forgive us, We forgive you."

2002年の初夏のことだ。9.11からあと数か月で1年という時期だった。ぼくはある平和イベントの企画プロデュースを任されていた。そこで流す取材動画収録のため、単身、撮影機材を抱えて、アメリカへ飛んだ。 折しも、ネオコンに支配されたブッシュ政権が9.11…

茶番劇と茶菓子

茶番劇という言葉がある。日本では、歌舞伎から生まれた言葉だ。下働きの未熟な役者は、楽屋で上位の役者たちにお茶の給仕をするのが常だった。つまり、お茶の係、茶番が楽屋でのもっぱらの仕事。舞台での出番がないので、上位の役者たちが楽屋を出ていって…

スターリン主義と無意味性の連携

反共…。いまや死語、古典といっていいだろう。 先進国の多くで、社会に異議を唱える人々を一括りに、「アカ」と呼び、それを排除のスティグマとしてきた。 当然ながら、そこには、資本家とその一部だけが得をする資本主義社会の弊害や問題点、矛盾に対して、…

セブンティーン

突然、目の前に、広く大きく、視野が拓ける瞬間を経験したことはないだろうか。 世界が一瞬にして変わったと実感した瞬間だ。そして、いままで自分が抱いていた世界観がいかに矮小で卑近で歪なものだったかに気づく瞬間だ。倫理や道徳を越え、自由で、知性と…

許されない蛮行

安倍元首相へのテロ事件。この国のマスコミ、ジャーナリズムがいかに、国民の深層にある不満や不信と負のエネルギーを理解していないかがよくわかる反応だった。「こんなことが日本で起きるとは想像もしてなかった。ショックだ」。そして、口を揃えて、「暴…

希望の国

このところ、訳あって韓国映画を見続けている。 私だけではないだろうが、高度成長期から消費社会へ向かう過程を時間差で追いかけてきた、中国や韓国の映画は、あの時代に少年期から思春期、青年期を過ごして来た多くの日本人にとって、ある種、自分たちの時…

なんで見えない

「なんで見えない、わたしわからない…」 名古屋入管で死亡したスリランカからの留学生、ウィシュマさんの亡くなる最後の言葉だ。死亡時、ウィシュマさんの体重は20キロも落ちていた。病状が現れてから、死亡するまでの間、適切な医療処置や入院搬送されてい…

芸と芸術の間で

演劇の世界から映像の世界へ転向して間もない頃だった。 NHK主催の映像セミナーに参加したとき、NHKを退職してフリーとなり、基調講演に登壇した演出家の和田勉さんと話をしたことがある。 和田さんは、映画とは異なるテレビの制約された特性を生かす映像表…

燕は戻ってこない

書籍をわずか数時間で読破したのは、五木寛之などの大衆小説を貪るように読んでいた、高校生の頃以来かもしれない。 新刊の桐野夏生著『燕は戻ってこない』。 www.shueisha.co.jp 決して短い小説ではないが、最初の1ぺ―ジで引き込まれ、午前遅い時間から読み…

一瞬の恋と犯罪

社会に自分の存在を示したい。他者に自分を認められ、評価されたい。 その願望は決して悪いことでも、恥ずかしいことでもないだろう。マザー・テレサが言うように、「人は貧しいからではなく、貧しいがゆえに、自分が社会からまったく必要とされていない。」…

いっちゃえ、グランドデザイン

ぼくらは風景や景観、人物、対象物を正確に認識しているつもりでいても、物事、世界の捉えた方、見方、理解の仕方において、脳の経験則や民族的、個人的な体験記憶に縛られて、一応ではない。また、近年の量子力学や宇宙物理学の研究でも明らかになっている…

巫女の肖像

胎児性水俣病患者、上村智子さんの写真を初めて目にしたとき、言葉をなくした。高校生ときだ。 (胎児のときに母体が取り込んだ有機水銀が母体を通して胎児に堆積し、有機水銀を摂取した母体ではなく、胎児に重篤な水銀中毒症状が発症する。これを胎児性水俣…

サマリア人の悲喜劇

穏やかな人、物静かな人、やさしい人、いたわりのある人…。多くの人が思う善き人とは、そうした人のことだろう。確かに、笑顔を絶やさない人や言葉のやわらい人、ゆったりした空気感のある人に出会うと、人の心は落ち着く。だが、それができるのは、主張をひ…

砂の器のオリンピック

連載小説『砂の器』が出版されたのは、いまから54年前。1967年のことだ。ハンセン病患者への差別を背景とした、その小説は、映画化もされ、テレビドラマ化もされた。 だが、1974年、映画は芥川比呂志のテーマ曲とともに大ヒットしたが、映画化の際には、人権…

アスファルトをはがして種を撒く

大学4年のとき、友人のひとりが言い出して、大学西門の早稲田通りに面する蕎麦屋の二階で勉強会をやることになった。 当時、文学部の教養は2年。そこで出会い、専攻に分かれてからも何かとつるんでいた仲間6人で、それぞれが専攻に進んで学んだとこ、研鑽を…

人新世のオリンピック

人には、見たいものしかみないという、心のメカニズムがある。 危機的状況に追い込まれるほど、この装置は巧みに作動する。現実からの回避や逃避行動をとることで、危機をないもののようにデフォルメしたり、透明化する、あるいは、代替えのできる何かへ意識…

もたれあいの国

高度成長期から消費社会へ移行し、バブル崩壊の過程で常に言われた言葉がある。「護送船団方式からの脱却」という言葉だ。記憶している50代以上は少なくないだろう。要は、業界毎の談合容認や国の施策としての業界保護から、自由競争へ。排他的だった業界の…

風のない大人たち

ぼくはいつも風を感じる、風のように生きていたいと思う。 一つ所に留まらず、変化を恐れず、だれかの尺度や世間の下世話な噂さ、他人の評価ではなく、自分の納得する生き方を自分の手で拓いて生きるためだ。 「いい歳なのに、子どもみたい!」とよく人に言…

あなたと私のダンディズム

かつて、ダンディズムという言葉があった。 いまでは死語だし、ジェンダーからいっても、男性に使われて来たそれは、使われた方によって、いまでは男性性や女性性における差異を助長し、差別になるものだと言われるだろう。 だが、ダンディズムを言い換えれ…

青山のこと

所用で表参道にいった帰り、ふと思い出して南青山三丁目のアートスペースまで歩く 乃木坂から歩いてすぐのところだ 南青山の住宅地の路地裏には、こじんまりとしてはいるが、それぞれの分野の逸品、一流品、希少品を扱う店が点在している 知る人ぞ知るという…

Hold Up Stage Up

私、悪くないもん! その言葉が必ず先に出る人がいる。出ないまでも、まず、相手への批判や文句、ケチをつけることから始める人がいるものだ 仮に、相手への批判をするにせよ、論理的にそれができれば、まだましだが、論理以前に「自分は悪くない」を前提と…

なにひとつ、未来は手に入らない

コロナでいろいろなものが変わりきっと大きく変わっていくだろう スローライフにも スローフードにもライフスタイルそのものが自然を消耗したり心を消耗させる生き方から そうでない生き方の選択があることをぼくらは知った 自動車業界はハイブリットから電…