秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

2017-01-01から1年間の記事一覧

誤った記憶の海

記憶…その屈折率を最初に分析したのはフロイトだ。記憶…その喪失をポエムにしたのはプルーストだ。記憶…そのでたらめさを射抜いたのはジョイス、ベケットだ。 ぼくらは経験、体験によってさまざまな学習をしている。学習を成立させているのは、記憶だ。じつ…

誇りある実現

ぼくらは、社会や世界の出来事に、事件に、いろいろな反応を示す。 憤りを感じる人、同情を抱く人、同調する人、悲しむ人、嘲笑する人、狭窄した考えで批評する人、他人事のように批評する人、狡猾に利用しようとする人…分析する人、解釈する人… そして、無…

いままた、広がっていくヘンな近代

明治期の文学界の動向というのは、日本近代を知る大きな手掛かりのひとつだ… 大学1年で履修した教養科目「文学」の最初の講義で、教授がそう語ったのをぼくはよく覚えている。 中高の国語や社会の授業で、多くの人が学んでいるのだが、日本近代文学の始まり…

耐性という鈍感さ

ぼくらは一時期、結核という病にまったく無関心でいられた。 結核が、それまで不治の病といわれ、がんよりも死亡率が高ったことなど、おそらく、いまの若い人はほとんど知らないだろう。 ペニシリンに始まり、抗生物質が次々に登場し、衛生医療の発展もあっ…

変わることはない

日銀短観が発表された。今まで使われていなかった、景気は拡大へ向かっているという文言が久しぶりに使われている。 家計消費はこの数年、マイナス消費で、拡大とはまったく無縁だ。企業の役員や幹部社員以外の一般サラリーマンの給与は物価上昇率に追いつい…

互いの努力と欲望

数年前の日本アカデミー賞作品賞に「舟を編む」があった。 その中で、コニュニケ―ション能力が豊かではない不器用な青年が、ぼくは人の気持ちがわからないから、仕事で人とうまくやっていけるかどうか自信がない…といったことを下宿先の大家さんに語る。 す…

民主主義という怪物

気に入ったことだけやる。気に入った人とだけつながる。気に入った人の集合を目指す…。一見、自由で当然のことようだけれど… 民主主義というのは、自由、平等、博愛といった、その掲げる普遍的価値Universaly Valueがなくなれば、ここにあるように、相性や共…

ほど遠い、笑顔

不寛容さの時代…なんて、だいぶ前からいわれているけれど、ぼくには、どうもそう思えないんだ。 確かに、世界の潮流は、移民排斥や民族優位主義、そこからくる人種差別や排他主義へと走っている。 分断を煽り、それによって、敵をつくり、これに同調させるこ…

海を取り返す

ぼくは、今年、海を取り返しに行こうと思っている… 海を取り返す。それは記憶の海を取り返すことだ。当然、その記憶は歪曲され、変質し、創作されたものだ。人の記憶は、身勝手な脳が作り出す、辻褄合わせの仮想に過ぎないのだから。 だが、それを承知で、あ…

言い訳はするな

男なら、言い訳はするな。 そんなセリフはつとに耳にしなくなった…そう思うのはぼくだけだろうか。 男女差は関係ない。だから、男なら…は、余計かもしれないが、子どもの頃に、親や周囲の大人たち、あるいは部活の先輩などから、そう言われることは当たり前…

それをいっちゃ、おしめぇよ

「それを言っちゃー、おしめぇいよ」。 映画『フーテンの寅』シリーズには必ず使われる決まり文句がある。そのひとつがこれ。 よく使われる下町言葉。じつは、ぼくらの暮らしの中には、それにはふれない、いわないことが賢明だとする文化がある。 人間関係、…

無力な公式語

ぼくは道を歩いていても、コインランドリーにいても、だれかとお茶をしていても、行き交う人の姿や周囲の店や建物にひどく心を奪われてしまう。 以前、ある人と歩いていたら、「ねぇ。私の話、聞いている?」といわれ、「ああ、聞いている…」と答えのだけれ…

同じにしか見えない

いまは亡き、名戯曲家で小説家の井上ひさし氏。 井上ひさしをテレビの構成作家から、一躍小説家にした名作に『モッキンポット牧師の後始末』という作品がある。 昭和20年代に井上ひさしが通っていた上智大学文学部仏文科の指導教授を題材にした自伝的小説…

パワースーツの中身

肩書や地位が人をつくる…という言葉がある。 ぼくは肩書や地位といった人間の属性にほとんど興味は持たないし、社会的な肩書や地位がその人の人格を決して表象するものではないと考えている人間だ。 人の価値や魅力といったものは、肩書や社会的地位をはずし…

海の夢想家たち

子どもの頃、夢想したり、妄想にふけったり…。つまり、現実の時間にそぐわないでいることはいけなことのようにいわれた。 なに、ぼんやりしてるの。ほら、ぐずぐずしないで。ほら、よそ見しない…。 すべての母親とか、親がそうしたものとは限らないだろうが…

かすかな期待

このところ、20代や30代の新しい人たちとあちこちで出会う。そして、質問攻めに遭うw ぼくがやっている福島のこと、NPOや映画のこと、あるいは舞台、演劇のこと、教育のこと、地域課題や政治のことなどだが、それ以上に、どこでも共通なのは、「なんで…

ぼくらの現実

人が人と、人が社会と、人が世界とつながるための作法とか、ふるまい、所作といったものが、かつてはあった。 それは、人と人、人と社会、人と世界の距離や間合いがいまよりずっと離れ、出会える人、出会える社会、出会える世界がいまより驚くほど、狭かった…

組織から離れて

もうずいぶんおやすみしているけれど、震災前は、高視聴率ドラマのキャスティングプロデューサーSと湘南でよく船を操船していた。まさに、Sがキャスティングしていた男二人の「ビーチボーイズ」w 飛行機と船の操縦は、共通点が多いのだけれど、基本は、いま…

ただいま思案中

ぼくらの生活や社会、国や世界で、鬱屈し、屈折した感情がシノギを削り合っている…。そんな気がするのはぼくだけなのだろうか。 鬱屈、屈折した感情というのは、一言でいってしまえば、コンプレックス。いまの時代を一言でたとえるなら、このコンプレックス…

おかげさま

ひとつの目標を立て、ひとつのことに人々が結集する…。多くの人は、それだけで素晴らしいことだと関心したり、ほめそやしたりする。 だが、果たして、ひとつのことを人々が団結してやることは、そんなに立派なことだろうか。すごいことなのだろうか。 たとえ…

文脈

文脈を読むという能力がぼくらから失われている。 信号として発信されるもの、出来事として現れる事象…それらをそのとき、その場での点として認識することはできても、その信号や事象が、じつはこうした点で、こうした文脈をつくっているのではないか… そう…

主役はぼくたちではない

企画書作成から考えれば、3年前からになる。 福島県委託事業「チャレンジふくしま若い力風評対策提案事業」。平成26年度、27年度と連続して選定された。審査のための企画立案から下打診、根回し、そして、事業計画書の作成と実施。事業途中での報告書作成や…

言葉、声と心のありか

人の声、歌声というのは、人の心のありか、姿を映す鏡だ…とぼくは思う。 もちろん、そこで発する言葉、メロディ、選曲がとても重要だけれど、言葉を、曲を生かし、そのよさを伝えられるかどうかも、そこにかかっている。 おしゃべりが上手な人、あるいは、歌…

それぞれの前提

ぼくらは、人とのかかわりや社会、国、世界とのかかわりにおいて、いろいろな前提を生きている。 だけど、この前提ってやつが、やっかいな代物だ。 何を基準として、それぞれが前提を生きているのか。じつは、それがはっきりしない。はっきりしないどころか…

中途半端な思い切り

子ども頃、よく親にも、教師や先輩にも、「中途半端なことはするな!」と叱られた。 やるなら、やる。やらないなら、やらない。やりもしないで、あきらめる。やっていても、途中で投げ出す。やっているのに、ほかに気をとられる。あれもこれもと手を出す。 …