秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

主役はぼくたちではない

企画書作成から考えれば、3年前からになる。

福島県委託事業「チャレンジふくしま若い力風評対策提案事業」。平成26年度、27年度と連続して選定された。審査のための企画立案から下打診、根回し、そして、事業計画書の作成と実施。事業途中での報告書作成や経理処理と完了報告書…

ある意味、この3年は、事業そのものもさることながら、これに付随する作業に時間を費やしてきた。

発足当初から国政、行政の助成金は当てにして来なかった。ほぼ自前で、その範囲でできることを積み重ねてきただけだ。唯一、助成金をえたのは、民間のトヨタ財団地域連携助成のみだ。東北に拠点を置かない団体としては異例の選定だっだと後で伺った。

こちらは、企業の収益の一部を社会貢献のために使う。だから、苦労して申請もしたし、選定も喜んでうけた。

国民の税金を助成という形で行う事業は、いろいろとこれまでも物議をかもしている。行政の委託事業とは違い、団体や企業、地域団体の自立、収益向上のためのもので、市民や社会支援には直接つながらない。雇用の促進や産業の活力回復といった点はあるが、社会貢献を目指す団体が選ぶ活動資金の得方ではない。

場合によって、それが逆に、自立や活力回復をダメにする。助成金依存と助成金の流用だ。

委託事業ももちろん血税によるものだが、行政にかわって、その事業選定を受け、代行するものだ。私たち団体が委託事業の選定を受けて、実績は残る。だが、それによって、団体が潤うわけではない。行政と話し合いながら、自分たちのやりたい事業がやれる。それだけだ。

そして、私は、それで十分だと考えている。当初から、広域行政、地域行政とのつながりの中で、行政では手の届かない、見えてない市民レベルのネットワークによって地域に新しい風を吹かせたいとだけ考えて取り組んできた。それがさらに、行政を動かし、地域を動かす。

そのためには、私たち団体そのものが、行政はもとより、市民から信頼されたなくてはいけない。当てにされなくてはならない。だから、当初、自前でその姿を示してきたし、いま委託事業でも、計算、数値にならないところで、予算以上の取り組みをしている。

福島に限らずだが、被災や災害のあと、直後から数年が経過しても、いろいろな問題が起きる。被災地域の支援の名を借りて、利益を得ようとする輩もいれば、功名心を満たそうとする連中もいる。

被災地域内では、地域間のエゴのぶつかり合い、利権の奪い合い、まちづくりや地域再生の意見の対立による溝も生まれる。決してきれい事では語れるものではない。

その中で、被災をチャンスに変えて、バネにして、自分たちの新しい一歩が、次の世代へつながる道標になればと力を尽くしている人々がいる。私が、現場主義なのは、そうした人たちの姿、言葉、取り組み…苦労を笑うその逞しさと強さを見てきたからだ。

私たちは彼らに代わることはできない。そこに暮らすこともできない。だからこそ、彼らの自立と新生への意欲と取組をまだ知らない人々に伝え、それを支える人々をひとりでも多く生み出すことだと考えている。

だだし、中途半端な理解や支援などというおこごましい目線ではなく、共に泣いて、笑って、怒って、なじみのように何度も顔を合わせ、変わっていく被災地の姿を一緒にみつめながら、それを新しい一歩に変えるのだと誓い合う。その上でのことだ。

主役は、彼らであって、ぼくたちではない。

昨年は生産者という主役を知ってもらった。今回は、地域の伝統、文化を受け継ぐ次の世代を育てる人たちと、子どもたちが主役だ。

MOVEの事業を見てもらいにきてもらいたいのではない。福島の思い、願いを生きる人々、子どもたちを見てもらい、その魂から自分たちの町、地域、次世代育成のあり方を一緒に考えてもらいたいのだ。

新しい地域のあり方を。地域と地域、地域と都市の新しい人のつながりのあり方を。