秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

数字の二重構造

経済や国民生活の動向を示すのに、いろいろな指数が使われることはきみも知ってるよね。

そして、その指数や指数が示す動向、つまり、数字の動きで、経済や国民生活がうまくいっている、いないの判断基準にされたり、市民生活が潤っているとかいないとか、政策が行き届いているとかいないとかの議論の材料にされる。

各省庁が定期的に行う動態、動向調査は、つまりは、政治+中央官庁の通信簿のようなところあるんだよ。国の調査なのだから、だれもが当然、客観的で、中立で、正確なデータだと思っている。

だけど、決してそんなことはない。

フィールドワーク、聞き取り調査や社会調査をやったことのある人間なら、すぐにわかることだけれど、質問や母数をどう設定するか、計算式をどう設定し、出てきたデータをどう分析するかによって指数は変わるんだ。

まして、調査形式があらかじめよい結果を導くように意図されていると、なぞる程度の実数しか把握できない。これは、じつは官僚自身がよく知っていることなんだ。

国会で、アベノミックスが失敗なのか、失敗なのではないかの党首討論があった。そのやりとりは、じつにレベルの低いものだった。きっと、そう思った人は少なくなかったんじゃないだろうか。

中央官庁の官僚や中央官庁の外郭の公益法人がつくるデータをもとに、ああでもない、こうでもないと実態を視野に入れてない、ずれた説得力のない議論が繰り返されていたからさ。

ぼくは、この人たちは政府であれ、野党であれ、なにもわかっていないんだな、じつに不勉強だなと思いながら見ていたよ。あるいは、ただ、自分たちをそれぞれによく見せたいだけなんだろうなってね。

簡単に一つの例を挙げれば、またもや、自分を優位に見せるために民主党をこけおろすだけの安倍首相の例のやり方で、民主党政権時代より雇用は拡大し、企業収益は上がったを繰り返す。野党は、それに実数で反論できず、国民の生活実感に景気は実感されていないの繰り返し。

統計数値では雇用は増大しているのは事実さ。だけど、非正規雇用やパート、アルバイトで働いている人の多くは知っている。第二次安倍政権になってから、飲食業など非正規雇用に頼る会社が、あちこちで、パートなど非正規雇用で働く人たちに、社員と同じく、雇用保険社会保険加入を一気に薦めた。

雇用形式は賃金や労働条件を含め、なんら非正規雇用と変わらないのに、給与形態だけ社員と同じにしたのさ。もちろん、賞与も出る。だけど、賞与といっても、ご祝儀程度の数万円が年2回社員賞与と同時期に支給されているだけさ。

つまり、うちの会社は、これだけの人員を表向きの数字として、正規雇用に切り替えましたをやったわけ。実態は、これまでのパート収入から天引きされるものが増えたのだから、手元に残るお金は少なくなる。その分、より長時間労働をしなくてはいけなくなるってわけさ。

しかも、長時間労働にならないように、勤務時間を微妙に調整して、タイムカードを押した時間ではなく、実働の時間しか計算に入れないという小技まで使っている。

これは、政府や財務省経産省厚労省を中心とした官庁が経済対策、雇用対策の通信簿をよくしたいために、経団連はもとより、全国の商工会議所や業界組合にせいのでトップダウンで指示した以外のなにものでもない。

もちろん、雇用保険社会保険加入がそうした非正規雇用に広がることはいい。だけど、雇用増大の実数は、そんなところにはない。数字は二重構造になっている。

企業収益の問題は、ここでは語らないけれど、ことほど左様に、雇用は増大と胸を張る首相も、まるで裸の王様なら、それを指摘できない野党も節穴なんだよ。

政治がいかに、機能していないか。国民が直面している実態からいかにほど遠いかがそれだけでもわかるじゃないか。

ウソで塗り固めたような政治とそのウソに何の疑問も、実態に即した議論もできない人たちが、国の大事だと、あれこれ大仰に語っている。

国の大事は、国民の置かれた現実を直視し、明らかにすることだ。詭弁や実態のつかめてない指数を挟んで、オレ様議論をすることではない。

謙虚に反省し、力の足りなさを国民に詫び、よりよくあるために、国民とともに、いまなにをなすべきかを真摯に考えることだ。率先垂範して、実態のない指数に実態を与えることだ。

そんな初歩的な議論もできない国会だから、民主主義も国民主権主権在民もますます遠のいていく。