秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ていねいな議論

このひと月ほどだろうか、NHKのニュース報道で、政権の取り組みや自民党の総務会、税調、諮問機関の情報を伝えるとき、NHKらしいが、統一して使われている言葉がある。きみは気づいてるかい?

「○○について、今後、ていねいに議論を進めていく予定です」

これまで、使われていなった、“ていねいな議論”。参議院選挙で自民党単独過半数をとり、衆参合わせて、自公及び改憲勢力だけで、改憲の発議ができるようになった途端、出てきた言葉だ。

安保法制のときには、強行に次ぐ強行で議論も尽くしたといえなかったのが、改憲が発議できる状況になって、NHK報道から突然、「ていねい」が出てきた。これには、ぼくも思わず、笑ってしまった。それを言わせているものが透けてみえるからね。

世論調査で、国民の半数以上が、政権を支持しながら、同じく、半数以上が改憲に否定的だ。公明党支持母体の創価学会でさえ、改憲派護憲派の対立がある。

安定的で、持続的な揺るぎのない社会、経済状況を維持したい…。現実には、そうなっていない実状はあるにせよ、なんとないいまがこのまま続くことを多くの人々が望んでいる。下手な野党なんかにやらせたら、どうなるかわらない。その不審も背景にある。

しかし、彼らはわかっている。

なんとないいまを続けるのに、憲法改正は不安要因だからだ。積極的にせよ、そうではないにせよ、なんとないいまを危うくするものは、遠ざけておきたい。それが現政権支持ながら、安倍首相が望む民意が改憲に、せいので行けてない実状だ。これは政権と政権をマネージメントしている大手代理店の総研がよくわかっている。

そこで、次のステップへ向けて、戦術を飴に変えている。

ていねいな議論をやっているというプロパガンダはもちろんだけれど、膨大な補正予算もそう。民意を変えるために、ずいぶん金がバラまかれている。

沖縄や原発再稼働での強引さは、ほとんど報じられないけど、それと同じくらい財政危機の国家経営とは到底思えない大盤振る舞いもほとんど報じられない。

一方で、中国包囲網の外交成果や実績は、プロパガンダとして大量に流される。やれやれ!とはやし立て、喜ぶ無知な輩は少なくない。

こうした状況に、野党はといえば、もはや野党とはいえない民進党。代表選挙の顔ぶれを見て、おいおいと思った人は少なくないだろう。前原氏にいたっては、自公の御用聞きのような発言を繰り返し、野党の党首選に出る意味さえよくわからない。
もしかしたら、前原氏は、民進党分断の自公のパシリか?w

他の候補者しかりだが、これで本気で自公と闘えると思っているとしたら、お粗末の限り。自分たちの脆弱さを本当に理解していないなら、前原氏を党首にして、ゆくゆく自民党のためのお抱え野党に解党した方がいい。

連合依存の政権は、連合がそうであるように、本気で政権と対決する根性なんてありはしない。既得権やこれまでの慣例、慣習に縛られて、国民の声とは名ばかりで、連合の声を反映するだけのものだ。

ご存じの方もいるかもしれないが、非正規雇用の問題が社会問題化しとき、当初、連合はすこぶる非協力的、否定的だった。自分たち正社員の労働を守るというのが連合の基本だからさ。国民全体のことなど、考えてはいやしない。それが野党連合の足かせになっている。

要は、本気で国民ファーストの国会議員や政党はないに等しい。いっておくが、ここでいう国民ファーストは、都民のことでもなければ、生活が安定している限られた人たちのことではない。そこに手が届いてない人たちのことだ。

東大を出て、官僚から政治家と一環して、血税を食らっていながら、政治学社会学の基本でもある、「相対的貧困」も知らない議員が、手が届いてない人をパッシングする。

これ、じつは、それほど豊かではない人たちが同調しやすい。オレたちは生活保護ももらってないのにぃ~!というやっかみが生まれやすいからだ。中途半端に豊かな人は、もっと同調する。がんばってオレはここまできたんだから、おまえもやれよ!になるからだ。本当に豊かで、育ちのいい人はそれはやらないw

結局は、だれもかれもが、自分の物差しでしか、世の中を見ていない。

きっと一番に幸せにしなくてはいけない人がだれなのか、その具体的な人や姿が見えていないからだろうね。一番に幸せにしなくてはいけないのは、自分じゃない。

「世界ぜんたいが幸福にならないうちは、個人の幸福はありえない」。

それには、もちろん、言葉ではなく、本当に、ていねいな議論をみんなでしよう。