秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

神宮の森も泣いている

常識や道理から考えて、明らかに筋のとおらない事がまかり通るのが世の中というものだ。

しかも、その多くは、庶民の生活感覚や日常とかけ離れたものであることがほんどといっていい。

ほぼ毎朝、私が走る神宮の森。絵画館のすぐ隣には国立競技場があった。いまは更地整備が進み、いよいよ基礎に入るかという段階。

それがここにきて、建設費2500億円のめどが立たないまま、当初のデザイン案通りの施設建設を進めると、また、強引で非常識、道理の通らないことをやろうとしている。

歴代オリンピックのメイン会場建設費の5倍はする建設費。しかも、現実に試算してみると、1650億円では建設も無理で、納期も間に合わないことが当初からいわれながら、今年になって、政府の耳に届いた。

辻褄の合わないことを強引に辻褄合わせしようとしているのは、調子のいい発言を海外で繰り返す首相のおかげだ。官僚やオリンピック委員会が政権の顔色をうかがい、きちんとした情報を伝えられない。伝えても、なんとかしろと押し返されるのがわかっているから、口をつぐむ。

4年で完成する計画に変更し、併せて血税を無駄にしない工夫はいくらでもできる。ところが、見栄と体裁ばかりにこだわる政権は、庶民の血税を箱ものの見かけために湯水のように注ぎ、選手強化費やスポーツ振興費を削っても強硬するつもりだ。

そもそも、東北3県の復興、再生も途上。原発事故の収束のめどすら立っていない。そこに無理やり、政権の虚栄を満たすために東京オリンピック誘致合戦がされてきた。

復興事業が資材の高騰や人で不足で十分に進んでいない現実を無視して、東京オリンピックがくればさらにそれが高騰し、通常では考えられない税金の投入が必要とされることは自明だったのにだ。

当初の計画通りに建設できたとしても、完成後、年回13億円もの維持管理費が湯水のように垂れ流される。

財政再建など関係なく、安保法制と同じく次世代に大きな負担となる荷物を、政権の見栄体裁だけのために、強引に人々の常識を蹂躙してまで実施する。

こんなことがまかりとおる国で、物を大切に、人に親切に、といった道理のとおる教育ができるはずがない。

恩寵公園でもある神宮の森が、泣いている。