秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

それしかない

それぞれの業種の先端企業は、叡智をふりしぼり、そして、持てる力をフル稼働させて、次の時代に必要とされるテクノロジーを艱難辛苦、開発している。

中小でも、大企業ではできない分野、収益率など対費用効果を考えて、二の足を踏む分野に果敢に挑戦している。


そして、それらの企業活動を底辺でささえる零細企業も、技術や質にこだわり、それら世界企業や市場の拡大を目指す中小のために粉骨砕身、求められる仕事に邁進している。


だが、それでも、人々の生活はそれほど豊かにならず、富は歪にしか分配されない。かつては、この正当で、単純ともいえる成長戦略が成立したが、同じことをやりながら、成果が生まれない。


そこで、効率化や生産性、技術革新、ネットワーク化によって、さらに収益率を高めようとすると、これまで人の手を必要としていた企業活動の多くの部分が不要となり、特質した専門性やスキルだけが求められるようになる。

同時に、開拓できる市場が地球という空間の限界とぶつかり、特質した専門性の高いもの、高いスキルによる高付加価値性のあるものを生み出す以外、収益を得られなくなる。富はこのラインを軸にしてしか循環しなくなり、分配の平準化から特化へと移行する…。

富の歪な分配をどこかで平準化しようとしながら、じつは、それ自体が、富の分配や格差是正から遠ざかる。

そして、必要不可欠なのは資源や環境だけとなり、主導的立場、原資を獲得できる組織や個人に富は集積することになる。

資本主義における成熟化とは、ゆえに、あまねく人々を幸せと安定へ導くはずだといった、その基本理念そもそもに矛盾と不条理を伴っている。

原資を持ち、制度を指揮、支配できるものと、それを有用に運用するものと、生産や技術を集約し、コントロールするものがいれば、底辺で支える層の質と数は調整可の入れ替え可能となり、地域も指定されない。

これがグローバル化だ。

そして、底辺で支える人間の質と数が、あたなたでなければならない、あなたたちでなければならないと限定されず、地域も指定されない選択肢の多さが、富の配分の歪さをさらにつくり出す。

いうまでもない、選択肢の基準は、成熟した資本主義社会のシステムに順々であるか否か。取り替え可能な存在、地域であることに抵抗がなく、個人史や地域、民族、人種、宗教、文化、歴史へのこだわりを持たないでいられるかどうか。

つまり、誇りとか、尊厳とか、自尊感情とか、自立とかを持ち出さないで従えるかどうか、その枠組みにしがみついても、あぶれない方がいいという選択でいられるかどうかの基準になる。

つまり、グローバリズムはそれを推進する中枢に生きる人々にとっては、心地よく、そうではない人々にとっては、極めて、居心地が悪い。人間性や地域性、個体識別を全否定されるからだ。

パレスチナにおけるイスラエル偏重のブッシュが引き起こしたテロとの戦いは、どうやら、第三次世界大戦と呼ばれる規模にまで拡大しそうな情勢になってきている。

だが、それはかつてのような、枢軸国連合国との対立といった国名をあげてそうだといえる戦争ではない。

いまいった、グローバリズムで世界基準を設け、資本主義の限界が来ているがゆえに、やむえないので限られた国々、階層における安定を目指そうとする国々と、中枢にはなれず、それでも取り替え可能なまま、それを底辺で支える枠組にはいたくないという人々との戦争になる。

ことわっておくが、いきなりテロリストはいない。そうした人々の中からテロリストは誕生していくのだ。

いきなりいるテロ集団は、専門知識をもった元イラクの軍人やイラクアルカイダ、そして元CIAとった連中だ。イスラム国はアメリカがつくったといわれるのは、もともとアメリカの諜報・調略活動が自国の代替えの戦闘組織として、武器を与え、戦術・戦略を教え、育ててきたからだ。

これからは、グローバリズムの枠組みにとどまる以上、世界のどこに敵がいるのかわからない、情報戦、諜報戦の闘いだといっていい。

だから、やるならやるで、いうならいうで、見えない敵と戦うための諜報機関、調略ネットワーク、交渉テーブルにおいても、グローバルでなくてはいけない。事前にすてを用意しておかなくてはいけない。

この国は、どうやら、それらすべてを持たないまま、ひとりの首相の情緒で、かつ、それを熱狂的に支持する人たちとで、テロ戦争に参戦していくようだ。手持ちの駒がない中でよくやっている…ともいえるだろう。だが、それは…

似ていないだろうか。

まるで、あの戦争を始めたときと同じだ。まったくそれらを持たない、無知のまま、未知のアメリカとの戦争に突入した。

そういえば、あのとき、12月8日、アメリカにとって、宣戦布告前に真珠湾を攻撃した日本はテロリストに等しかった。そして、テロリストまがいの奇襲をした国に勝利したとき、アメリカは、戦後の日本のアメリカへの従順さが、中東にも、いや世界に根付くと考えた。テロリストを駆逐してしまえば、次は、従順が支配し、自分たちのコントロール可能な「民主国家」が誕生すると考えた。

これもまた、アメリカの指導者の無知が引き起こした泥沼の戦争の幕開けとなった…。日本もまた、その同じ道を歩もうとしている。

日本だからこそできた、忍耐と調整…。国連高等弁務官事務所を軸に、紛争地域での非軍事、非戦の稀有な国として、いずれかに組することなく、緒方さん、明石さんたちを中心に、日本の国連NGOが積み上げた世界に誇る実績が砂上の楼閣のように崩れていく。

グローバリズム反グローバリズムが招く、危機を回復できる本当の力は、そこにしかない。世界に発信すべき、この国のメッセージがあるとすれば、それしかない。