秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

デラシネの男をいやしてくれる

4年半ぶりに、江ノ島にいってきた。
 
この間、鎌倉、湘南界隈には、なにかの折に1度だけ出かけたことがある。だが、私にとっての湘南のベースタウン、片瀬江ノ島は、震災後、まったくご無沙汰していた。
 
たまたま町田まで朝出かける用事があり、小田急線に揺られているうちに、すぐ事務所に戻るつもりが、陽気がいいので、「そうだ。江ノ島へいこう!」と思いついた。

震災前まで、自分だけのための時間ができると、仲間や女優を誘い、あるいは一人きりで相模湾プレジャーボートを走らせていた。波が高く、船を出せないときは、江ノ島スパや水族館で時間をつぶす。よほど、時間にゆとりがあると、蓼科で馬を走らせていた。

そうした時間は、震災後、すべて福島関係でつぶれている。
 
江ノ島まで足を延ばしたのは、この間、大腸がんを罹患した人と出会ってしまったこともあった。

ボート遊びのあと、必ず立ち寄っていた、片瀬江ノ島の和食割烹の清光園。そこのアメリカとのハーフのオヤジが6年前、大腸がん手術を受けた。手術は成功していたが、この4年半、その後の体調を聞いていなかった。

今日は、天候もよく、波も凪いでいる。陽射しが強い分、パーカーとスタジャンだけでもこの時期の寒さを感じない。海があり、お祭りまであり、天候は最高。もう私にはたまらないw

昼は混むので、少し前に、店に顔を出すと、この4年でだいぶ老けた、お母さんがいた。「あら、秀嶋さん…よね?」。4年半もご無沙汰していて、名前を憶えていてくれる。後から顔を出したおやじは、「やくざがくるとこじゃないんだよ、ここは!」と笑いながら軽口をいう。
 
店を手伝ってる娘の奈々ちゃんは、再婚した藤沢の鍼灸師の間にもう二児をもうけているという。
 
15年ほど前、初めてこの店に、CXのヒットドラマのキャスティングプロデューサーだったSと来た。以来、二人で、一時は、二週間に一度のペースで船にのり、この店でロマンスカーの最終まで飲んでいた。仕事を一緒にしていた、宮台真司氏や斎藤環氏も海好き、クルージング好きで船のあと、この店に案内した。

おやじさんもお母さんも老けたが、いきなり常連の脳外科医夫妻という他の客を私に紹介したりするホームタウンのノリは変わっていない。

海のそばの、名もない人のそこにある生活は、温かく、いとおしい。そして、軽口と冗談で、デラシネの男をいやしてくれる。

やっぱ。オレは海に散骨してもらおう。