秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

心と構えの建て直し

昨日の朝からひと月ぶりのいわき。撮影でお世話になったみなさんにポスターをお届けして御礼行脚。
 
合わせて、ずっと私と地元でMOVEを支えてくれている大手海鮮卸・販売のOさんの会社のCMロケハンとイメージづくり。
 
そうした仕事がらみの時間の中でも、次にMOVEで取り組もうとしていることのアウトラインを探っている自分がいる。
 
Oさんと同級で会社の有力スタッフであるYさんのおやじさんは漁師。おやじさんの漁船のある中之作。震災後の整備が終ったが、まだ漁のにぎわいはない。おやじさんに撮影の協力をお願いしながら、サンプリングの状態や試験操業での調査の実態など聞き取りをする。
 
翌日は再度ロケハンをかねて、再び中之作へいき、この間、映画の撮影で協力してもらった、地元古民家の修復事業に取り組んでいるTさんに、CM撮影での協力もお願いする。
 
あまり知られていないが、被災した豊間漁港は昔、マグロ漁の基地だった。このところ、すっかり魅せられている中之作の漁港は、かつお漁の基地。港は決して大きくはないが、それぞれに特徴と個性のある漁師町だった。

被災を逃れた船舶はいくつか残っていても、いまは漁のにぎわいがない。それが不思議な静けさをつくり、同時に、海好きの私には、もったいないなぁという思いを一層かきたてる。

薄磯の海もそうだが、私はいつもいわきの海を見る度に、震災前にここを知っていたら、どんなにか幸せだったろうと思う。そして、また逆に、知っていたら、もっともったいないと思い、もっとせつなく、悔しい思いにかられたとも感じる。

地元だから、地元ゆえの課題や葛藤、軋轢や対立もある。門司の小さな漁師町で小学校の高学年を過ごした私にはそれがわかる。町が小さい分、つながりも深いかわりに、決まり事や対立も多いのが漁師町というものなのだ。

だが、それでも海が人を救う。まとまらない地域を救ってきた。その海がなくなった分、福島の海岸線は大きな傷を負っている。それは大人だけではない。そのことがこのところ、ずっと頭の中にある。
いわきというより、海の町が気になる。そして、海のない中通りが、そして会津が気になる。海の町は原発の問題と直結している。中通は線量と風評の壁が、ある意味、浜通りより大きく立ちはだかっている。そして、会津は「八重の桜」以後の本当の闘いがはじまっている…。
 
物産や物産の販売にまつわるイベントや事業は、3年の中でずいぶん動き始めている。行政も予算がつけやすく、手がつけやすいから、かなり進んできている。その分、方向性を疑うものは少なくない。
 
大事なものを見落としながら、それでも進むのは、復興予算の期限や予算そのものの付けやすさが優先しているからだ。
 
だが、その見落としそうなものをだれかが拾っていかなくては、本当の意味での地域新生にはつながっていかないのではないだろうか…その疑問がこの半年、ずっと私の中にあるのだ。
 
前回も紹介したが、「里山資本主義」には、その疑問と疑問を解決するためのヒントが示されている。だが、それをやるためにも、人々の心と構えの建て直しがいる。

それは、福島だけのことではない。
 
 
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