秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

もっと感動をもらおう

音楽は、当然ながら、言葉を介さない。絵画も、同じ。だが、言語を介さないということは、言語に値する信号を音楽や絵画が持たないということではない。
 
モーツアルトの曲が自然関数を抜きにしては分析できないように、音符の配列は数式に等しい。そして、言語も、記号に置き換ええることができるように、詩の言葉の選択と配列は、音楽における譜面にも通じるのだ。

 
この音の数式にこだわるという点で、音楽と文学は相似形だ。そして、音楽も文学も、その音の数式において、絵画、画像を出現させる力を持っている。

すばらしい絵を前にして、そこに音楽を感じたという人は少なくないだろう。絵画は、色の配列と数式によって、音楽や文学と逆のベクトルから世界を画こうとする。

といったことを痛烈に感じさせる音楽家のひとりが、ラフマニノフマーラーもそうだが、現代音楽への扉を開いた巨星だ。
 
それだけに、演奏も難しい。
 
昨夜、年末の夜の番組で、これだけは見えておこうと思ったいた、辻伸行のスイス演奏旅行のドキュメンタリー。民放BSは、ヴァン・クラインバー音楽祭最優秀賞受賞前から辻をずっと追いかけている。

特番なので、すべての演奏を割愛しない。なかなか民放ではできないことだ。クラッシックファンの気持がよくわかっている。
 
じつは、私はピアノ奏者では、ドイツ系日系人のアリス=紗羅オットのタッチが一番好きだ。そのしなやかさとなめらかさは、おそらく世界トップだと思っている。だから、どうしても辻伸行の演奏が聴きたかったわけではない。

だが、ワーグナーブラームスラフマニノフがそこに滞在し、おそらく、人生の中で、
もっとも幸福な時間を過ごしただろうスイスでの時間を辻が追うという内容は魅力的だった。
 
辻という人の感性のすばらしさだろう。ラフマニノフの家を訪ね、演奏旅行の最後に
バイエルン交響楽団と奏でた、ピアノ協奏曲第二番。素晴らしかった。ライブではないが、テレビでクラッシックの演奏を聴いた、久々、震えるような感動があった。

そういえば、こうした感動をもらうことが少なくなっていた。
 
言葉を介さず成立する感動…。それは私が仕事においても、人との付き合い方にもおいえても、いつも課題としていることだ。

私はどうしても語り過ぎる。言葉に頼り過ぎる。そのために、大事な人と心をつなぐこともできないことが多いw
 
仕事では意識しながら、日常でそれができない。もっと感動をもらおう。