秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

塩野のこだわり

赤坂塩野は、練りきりなど職人技の茶席和菓子の名店。

だが、地元の人には、塩羊羹や大福でよく知られている。赤坂、乃木坂、青山界隈で古くからの住民は、よく知る店で、ここぞというときには、塩野の和菓子を贈答用に使う。

ちょとした自分への御褒美もあり。私は大福。塩野の和菓子は甘くない。そして、素材の味をこわさない。味に品がある。酒の肴にさえなれる和菓子。
 
一般に、赤坂というと虎屋が有名。だが、虎屋には申し訳ないが、和菓子としてのクオリティは塩野が上だ。なのに、虎屋より塩野が知られていないのは、店以外では購入できないからだ。それに女子が喜ぶスウィーツといういま風の世界へは一歩も足を踏み出さない。
 
だから、一切の卸をしていない。1店舗しかない店にいかないと買えないし、そこでは食せない。商売としては、味もよく、ブランド化を進めた虎屋に軍配が上がるだろうが、塩野は自らのこだわりとして、あえてその道を歩いてない。あっぱれ。

もうおわかりだろうが、私はそういう店が好きだ。
 
規模を大きくし、販促や宣伝をやれば、その分、本来の仕事以外のことに工夫と知恵を使わなくてはいけない。オペレーションをシステム化し、イメージ戦略のための得意客への営業戦略や商品開発や仕入れに人材を投入しなくてはいけなくなる。

だが、本来からいえば、仕入先との信頼関係、太いパイプと菓子職人の腕と技。味へのこだわりを極めることが、老舗といわれる店の本分。
 
菓子にかぎらないが、いまは、いろいろ戦略や戦術をめぐらし、見た目にもこだわる。素材として断トツの1位ではないものをどうそう見せるか、1位ではなくても、どう付加価値をつけるかに必死だ。
 
コンビニの独自開発商品も、各地で取り組まれる6次化といったこともそうだろう。だが、あまりに手を加え、あまりにあれこれいじり、本来の大切ななにかを失ってまで、戦略や戦術が勝ちすぎているモノが多い。

この間、郡山の鈴木農園で、なめ茸の不調で、郡山ブランドのにんじんを使ったジュースをもらった。驚くほどうまかった。これといった特別なことをした気配がない。いや、それなりの工夫や努力はあるのだろう。
 
だが、まさに自慢のにんじんを、ただジュースにした。そんな味覚だった。単純明快。だが、私は、これはみんなに好かれるだろう。どこかで火がつくと確信した。まさに、おいしいにんじんを食べている気分なのだ。つまり、生産者の努力を無にしていない。生かしている。

いいものは、本来の味をこわさない。食も人もそうだ。マスコミやうまい宣伝に乗ればいいのではない。著名人やタレントが絡めばいいのではない。本物は、もっと別のところにある。
 
私が近くを通ったからと久々に買った大福。こういうのに目がない人に食べさせようか…などと4つ買ったのだが、なぜか昨日は来客続き。つい、うまいといわせたくて、ふるまってしまった(涙)


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