秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

心ある奴は…

午前中、協賛してくれそうな企業への連絡と資料の送付作業。そのあと、うちのOA担当が夏のご挨拶に。
 
そういえば、今年は忙しさにかまけて、夏のあいさつがまだだったのに気づく…。うちは、青山WESTのドライケーキか、赤坂塩野の羊羹か、大福と決めている。が、台風も来ていることだし、来週、少し涼しくなってからあいさつ回りをすることに。

午後、うちの自主作品の音付作業に中野坂上のスタジオへ。雨の気配に電車にしたが、ま、蒸し暑い。スタジオに入るとまさに天国。編集スタジオにせよ、音効スタジオにしても、機材が熱を帯びるので、基本通常よりも冷房が効いている。
 
長い付き合いになる、Sが珍しくスタジオにいたので、しばし、いわきのことなど語り合う。
 
Sは、いま日本映画の名作といわれる作品にはほとんどからんでいるし、オレの作品の音づけをしたKは、日活スタジオに入っている。二人でメジャー公開の映画の三分の一近くをやっている。

この時期、Sがスタジオにいることが意外。しかし、9月からまた忙しくなるらしい。
 
Sの実家は気仙沼の近く。親戚が3人ほど亡くなった。幸い、ひとりきりのおふくろさんを震災の一週間前、東京に引っ越しさせていた。高齢にもなったからと同居ではないが、自宅近くのマンションに引き取ったのだ。まさか、震災と津波がくるとは思わず…

空家になった実家は、いま親戚の避難所のようになっていて、3世帯が暮らしているらしい。「こんなことなら、家財道具を人にあげたり、処分してくるんじゃなかった…」とSがいっていた。しかし、家を取り壊し、更地にしてから東京に来ようといっていた母親を「そんなものはあとでいいから…」と強引に呼び寄せたのは正解だった。おかげで、親戚が暮らす場所も確保できた。
 
Sは本当に不思議な奴だ。人並みのいろいろな欲求はあるが、本当に小賢しい欲がない。人もいい。人の助けになることならと、自然に奉仕ができる奴。人を押しのけてというタイプでもない。才能ばかりでなく、人間としてもやさしさにあふれている。
 
だから、ギリギリのところで母親を難から救う動きができたのだろう。

お互い、歳もいい歳になったし、生活も変わったが、東映東京撮影所でオレの指名で一緒にしたときは、互いに不思議な感覚になったものだ。20年以上前、いつか、こうしてオレの作品にSが音付をしている姿を互いに想像してたことが現実になっていた。オレたちには意外でも不思議でもない。
 
心ある奴は、志を果たして、いい仕事をいずれは共にやるものだ。オレたちは、まだ次の志を言葉にはしないが、互いに持っている。