秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

若者たちに目線を向けろ

先週オンエアされた、フジの開局記念ドラマ「若者たち2014」。残念な結果だった。

フジはこの数年、視聴率が悪い。困ったときのなんとやらで、テレビや映画でいま一線を走る若い俳優たちをざーと並べ立てたが、その安直なキャスティングが裏目に出た。

脚本も稚拙。本作オリジナルの「若者たち」を生かそうとしたのだろうが、いまどきの若い奴が妊娠問題や異性問題で、あんなに直情的で、短絡的にぶつかり合うことはない。

亡くなったオヤジが好きだった唄として「若者たち」のテーマ曲を割り込ませている設定も安直。そのダサさが、ドラマそのものの展開をダサくしている。
 
もともと、本作自体、ダサいものだ。だが、その裏付けとなる社会問題や生活の苦しさ、学歴のないことでの苦渋…といった背景があって、あえて、ダサい同士で、真摯にぶつかり合うから説得力があったのだ。本作の分析と取り込み方の方向を誤っている。

2014年というなら、もっと寡黙で、もっと無表情で、そして、もっと狂気があっていい。いくら衣装や設営を貧しく演出しても、お上品さとシャンシャンシャンが漂って、トゲがまったくない。

10年前に三田村邦彦主演で格差を扱った「見えないライン」という1時間物の映画をつくった。反響があって、大阪、九州、四国地域の民放でもオンエアされた。だが、あのとき、警告した以上にいま、格差は広がっている。

親の収入や学歴によって、スタート時点から平等さを欠いた社会というのは、昔からあった。だが、そこから抜け出す術
も、チャンスも当時は少しは残されたいた。だが、調査統計を見てもわかるように、いまでは、それらがまったく与えられない状態が増大している。

その中で、オレオレ詐欺に加担する生活のできない若い学生や就職できないために暴力団がらみのグル―プに吸い込まれた若い奴もいる。もっといえば、いま課題になっている福島第一原発事故廃炉復旧作業に、借金を形に無理やり放り込まれる連中もいる。

背後にサラ金闇金から借りて返済できなくなった奴、薬物にはめられて抜けられなくて借金をでかくしてしまった奴、ネット通販や買い物依存症で抜けられてなくなって借金をつくった奴など…裏側に、闇社会や様々な精神的な荒廃。家庭の崩壊、地域の絆の崩壊がある。
 
若者たち2014年というなら、その抜き差しならないところにいる、若者たちに目線を向けろ。