秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

福島から生まれなくてはいけない

東京オリンピックの決定と特定秘密保護法成立後、マスコミではまったくといっていいほど、取り上げられなくなったことがある。
 
福島第一原発事故の収束状況だ。
 
福島民報や民友といった地元紙、地元メディアでは取り上げられても、全国紙や全国ネットで大きく話題にされることがなくなっている。
 
増大し続ける汚染水の漏水やバブルなど施設の不具合もだが、処理の目当てのない汚染水をプールし続けることはもはや不可能となってきている。そのために、汚染水の浄化ができるALPSが導入され、やっと稼動できる状態になったと思った矢先、不具合が続いている。
 
20日になって、さすがに県が東電に状況説明と対策を問い出した。それもなぜか、遅い。ALPSの不具合はだいぶ前から話題になっていたはず。

一方で巷の話題は、消費税増税とその後の経済対策。いかがなものか…。
 
続いていた忙しさで読めなかった本をいま数冊、同時読みしている。その中のひとつ、すでに話題になっている本、「里山資本主義」(藻谷浩介・NHK広島取材班著)。

東日本大震災がこの国につきつけた地方の現実と、それを乗り越えるための自由自治独立自尊…。市町村レベルでの財政運用による現実的活用と自治をつくる市民の責任の自覚醸成。そして、それに基づく創意工夫と活力の回復…。さらに、それを広域につなぐ地域連携。
 
さらに、これまでのペーパー資本主義からの脱却と化石エネルギーや原発に依存しないバイオマスの活用だ。
 
私が震災後、福島を教訓にと指摘していることのすべてがここに書かれている。

著者たちのそれらの読みの基本には、世界の潮流が、市民の決断と決意に基づく、自立自治時代の到来の予見がある。市民を主体とし、市民を中心とした地域再生の道しか、第三、第四の道ないという、いまの時代の動向への理解だ。

だいぶ前、石橋湛山が驚くことに、戦前戦中、そして戦後復興期、すでに市町村連合の重要性を指摘していたことを述べた。まさに、その文脈を受け継いでいる。

だが、市民社会の形成のためには、情報の開示と公開、そして共有が不可欠。いまは法規制のレベルでそれらがとどめられるほど、情報の機密性は緩い。とはいえ、その流れに竿を差せば、市民の反発は醸成する。
 
しかし、同時に、それに懐柔されたきたのも、私たち日本国民、市民だ。
 
この本の中には、だが、それに懐柔されず、自分たちの村を、町を、地域を、自分たちの手で創造し、守り抜こうとしている人たちの姿が描かれている。

数年後、こうした本が福島から生まれなくてはいけない。