秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

思惑や打算を越えて

昨日、午後からいわきへ。いわきMOVE設立へ向けた準備会議とSmart City FUKUASHIMA MOVEプレス発表のためだ。
 
いま、震災後始まった被災地、いわゆる現地NPOや任意団体の中で、震災直後から2年5ヵ月がすぎて、いろいろな齟齬や行き違い、対立が生まれている。

すべてがそうだとはいわないが、被災当時、単独事業としていろいろな取り組みが困難な中、団結しなくては…協働しなくては…という思いで生まれた、新しい団体や活動が、安定してくればきたで、やはり、自社や個別の利益を第一にという思いが頭をもたげてくる。
 
あるいは、いくつの事業体や会社の均一の連合体であったものが、グループに分かれてしまい、当初のように、協働することも難しいという局面が生まれている。
 
しかし、それは当然のことだ。状況が変われば、抑えられていた欲や対立が生まれるのは人の常。
 
つながることで力をえようとしていたところから、つながらなくてもやれるじゃないか、いや、つながることの煩わしさを考えると、やはり、状況もよくなってきたのだから、被災前のように個別の収益を目指すべきだ…それが幅を利かせてくる。

もちろん、それ自体は、悪い事でも、非難されることでもない。

だが、問題は、少し落ちついてきて、じゃ、また単独の事業を…とせっかくの協働の考えを捨てることは、震災前と何一つ変わっていない地域に
戻るということなのだ。ひいては、一部の事業体や企業、団体は潤っているが、それが地域全体に還元されない状況は変わらない。
 
つまり、震災前と何ひとつ変わらないところに、落ち着いただけのことになる。だったら、あの震災当時の新しい取り組みが必要と感じた思いとは何だったのだろうか…

いつもいうが、東日本大震災が教えたのは、これまで、それぞれの地域、それぞれの事業体がオレがオレがばかりをやっていたが、それでは実は、地域というのはもう成り立たない時代にきているのだぞ…ということなのだ。
 
被災当時はその意識が多少なりともあったものが、いま、それが次第に被災地の中でも薄れている。結果、齟齬や対立が生まれ、協働の姿があいまいになっている。
 
そもそも、明確なビジョンや理念があって、生まれたものではないというのが大半。
 
いまそれがさまざまな問題をあらわにしているのは、結果、いいことなのかもしれない。だが、そういう時期だからこそ、協働という理念がなぜ必要なのかを考える必要がある。
 
それがなければ、いま一瞬、復興予算や補償金、助成金に群がって成り立っている地域が平常の事態に戻ったとき、なにひとつ、震災の教訓を生かしてない、ただの疲弊していく地域に戻ってしまうだろう。

いわきMOVEの設立は、協働できなくなっていく地域の現状の中で、協働することがいかに必要で、大事なことなのか、それを改めて、地域に足場を持つことから再スタートさせるためのものだ。

いろいろな思惑や打算を越えて、それを実現するためのベスト環境をこのひと月でつくる。