秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

身を捨ててこそ

いわきの支援事業を皮切りに、仲間を募り、まずは、被災地いわきの現実を知らせようと小さなイベントを開催した。
 
その過程で行政や地域の団体とより深く連携する上では、NPO法人の取得が不可欠…という現実に直面し、不慣れな素人作業でなんとか認可に漕ぎつけた。
 
だが、ありがたいことではあるが、やはり、わずか30名から40名程度のメンバーの会費だけでは、イベント支援事業というのは成り立たない。
 
すでに、そこまでたどり着くために、仲間たちもオレも自腹でいわきや会津を回り、イベント事業のために、いわき市や港区役所、保健所といった関係部署を回る費用も、また、そこで提出する資料づくりやコピー費用といった、いわゆる見えない経費はうちの会社の経費に吸収した。

なんとか大いわき祭を実現し、当初の目的であったSNS事業へ足を踏み出し、いわきでITセミナーを実施した。昨年の福島東北まつりは、規模を福島全県に広げ、その分、イベントの経費は大いわき祭のときの4倍以上になった。
 
これを共催の団体の県の助成金で賄おうとしたが、それが途中でとん挫した。結局は、これもうちの社でかぶる形になり、それがまた、うちの社の経営を苦しくするという状況を生んだ。それを打開すべく、協働団体には助成申請ができる十全な体制をつくってもらうよう要望を続けている。

同じくそこまでいく見えない経費もうちの社でかぶっている。コピー費や資料作成費はじつはバカにならない。規模が大きくなり、行政窓口やメンバーが増えるほどに、必要な諸雑費も膨らむ。MOVE放送局のための機材整備と提供もうちの会社の事業の一環にして、機材をレンタルする形をとった。

トヨタ財団の助成認可が下りたが、これはほぼSmartCityのための費用とITセミナーの費用にあてると全額が消える。それでも足りない部分は、会費で補う。それこまでやって、なんとかSmart Cityが見えてきたのだ。

MOVEが福島県内に拠点を持つ団体であれば、助成金の申請もできるし、認可が降りない事業ではない。だが、東京を拠点とするため、復興支援事業の手当ての対象団体となりにくい。そのために、協働団体との連携を強くしたのだが、これがまだこれからという状態から抜け出せていない。
 
トヨタ財団の助成支援はある意味、異例といっていいことなのだ。

そうした苦労を引き受けている。だが、この間、相馬のTさんの姿をみていて、これからの生活もままならない中、相馬にこだわり、そこから一歩も出ないという決意に自分と似たようなものを感じた。被災したTさんとは遠く及ばない部分はあるが…

団体の名前を売りたい、自分たちの活動を広く知らせて、場合によって復興支援事業を通じて、金儲けを考える人間たちは、被災当時からいた。いまもいる。怪しい助成ネタや支援ネタで、資金をだまし取られた人たちもいる。
 
それだけに、外の人間の支援事業については猜疑心もあれば、警戒心もある。
 
突破できるのは、肉体労働で汗を流し、それを継続的にやる姿か、事業としてやるために、何度も被災地に足を運ぶ労苦をいとわないことだ。それにすぐには応えてもらえないことも多い。
 
経済的な苦労や人の信頼をえることの難しさ…それにぶつかろうとしないところで、楽して何かをやろうとしている団体や人がいれば、それは、本気ではないということだ。真剣に、そして、ビジョンを持って、被災地や地域の支援を考える人々の活動を阻害し、その人たちの労苦を傷つける。

人はどうか知らない。ほかの団体はどうか知らない。MOVEが目指すのは、有名になるためでも、儲けるためでもない。市民ネットワークという新しいステージを福島から発信し、既存の流通や物流、マス情報を越えて確かに人が結びつけるプラットフォームを生み出すことだ。
 
清廉で誠実でなければ、それは実現できない。身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ。