秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

海からの信号

自然からの信号を感じる人がいる。人との出会いの中にある意味を感じる人がいる。地域や場と出会ったときに、そこにある磁場と自分との共鳴音を感じる人がいる。
 
人は無作為になにかと出会い、偶発や偶然の積み重ねの中にいまを生きているのではない。
 
それは素数が一見、何の意味性もなく、そこに存在するように見えながら、じつは、宇宙の成り立ちや神の数式を説く鍵を秘めているとわかってきたように。

私が震災後、最初に出会った、薄磯と豊間の被災した海岸。3.11のあと、4.11がいわきを襲い、まだライフラインも完全に復旧していないとき、そこに出会った意味…。
 
ほぼ丸3年になろうとするいわき、福島への支援と協働の活動の結果として、私はいま、その浜に生きる人たちの日常に深くかかわり始めている。引き寄せられている。

それはこれまでの地域の物産や人の紹介という枠組みを越えて、そこにある生活の姿や人々が抱えている課題や新たに抱え込んだ問題といったものをときほぐものに変わろうとしてることを私に実感させてくれている。

私たちMOVEの活動は、当初から被災地や被災した人々になにかを与える活動ではない。物やサービスを提供する活動でもない。そして、また、団体の活動維持のための収益事業には一切手を染めていない。
 
それは、地域の自立こそが活動の目的であり、そのために情報の発信によって貢献することを旨としてきたからだ。そして、私たちの活動によって出会った人々が自らの決意と意志によって、自由な協働と連携をしてもらうためだ。収益のために、その間に介在することを嫌っている。

願わくば、それによってこれまでの中央依存や政治・行政依存から脱却し、市民力によって自らの地域の新生へと歩み出してもらいたいからだ。
 
ただ豊かになれば、それでいいのではなく、どう豊かになるかを第一に考え、自分たちの地域にとっての本当の豊かさを選択できる、地域力・市民力を創造してもらうためだ。

そんな思いだけで歩んできた合間に、私はカメラを回し、また昨年からドラマをつくるようになった。収益事業をやらない団体の活動資金を私の本業からねん出するためだ。だから、社会映画、教育映画という限られた中で、わずかばかり生れた収益は私の収益としではなく、すべてこの3年のMOVEの活動費に消えた。

なぜそこまでするのか…常識では意味のわからない行動は、基本、怪しまれるw
だが、それが丸3年になろうとするいま、ひとつの大きな結果を導き出そうとしている。

昨年春にリリースした映画『誇り』と、昨年秋から取り組み、今年1月と2月に完成した作品の上映会が、地域の自治会主催によって開催され、地元の小学校の体育館で実施されることが決まった。
 
撮影で協力していただいたお礼にと、地元公民館を借りて…と当初は考えていた。それが、撮影の御礼にまわっているうちに、ありがたいことにそうした次第になった。

それは、私が3年前の丁度いまの時期、初めて見た薄磯・豊間の海に心ひかれたときから約束されていたことなのかもしれない。当時、私は、いわきに、薄磯の、豊間の、沼ノ内のだれひとり知り合いはいなかった。
 
それが3年の間に、こうした拙作の上映会をやらせてもらえるまでになれた。
 
きっと、あのときから、海は私に信号を送っていたに違いない。