秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

再生を支える誇り

意外なことに…。というのがじつは偽らない感覚だ。
 
いわき市で10日に開催することになった上映会もそうだが、すぐ翌日、東京の江古田駅近くのギャラリーで行われる上映会もそう。MOVEを応援・協働する会でお世話になっているHさんが上映会を企画してくれた。
 
そして、今度は、石川県在住で、いわき市海岸線地域のボランティア支援を続けているTくんが、石川県の地元小学校や教育委員会に根回しをして上映会を実施したいと言い出してくれた。
 
さらには、山口、大阪や瀬戸内の島で…と、FBでつながった方々が各地で上映会開催を検討し始めてくれている。

昨年の「誇り」をつくったとき、まったくそうした上映会は考えず、ただ、MOVEのFBサイトSmart City MOVEの設立発表会で上映し、その後、池尻の「いわき七浜」でこじんまりした上映会をやっただけだ。

今回は、作品が札幌国際短編映画祭に出品したこともあって、「誇り」のときとは比べられないほど、告知をした。
 
ひとつには、いわき市の被災した海岸地区の方々にいろいろな協力をしてもらったことがある。また、いわき市教育委員会新常磐交通や冨岡町にも撮影協力をしてもらったこともある。

地域のみなさんのご協力を多くの人に伝えておきたい。その思いが強かったからだ。それが結果的には、被災した地域のいまを広く知ってもらうことになる。

それが、前回の「誇り」と合わせて、今回の「みんな生きている」を上映したいという声が上がるようになった。
 
ならばと、提案したのが、「福島のこれからを考える」映画上映会という見出しだ。
それなら、MOVEの活動として各地域に、いまの福島、そして、これからの福島の課題を伝え、地域のあり方や傷を負った心の傷にどのような取り組みができるかを共に考えることができる。

この間、やはり応援・協働する会の0さんが、会津若松に避難している大熊町の方たちが、会津の織物を使い、大熊町の名にちなんで、クマの人形をつくっている取り組みを教えてくれた。
 
被災当時、避難当時、大熊や双葉の人たちが避難で会津にきて、しばらくするとギクシャクした関係が生まれていたことを私は知っている。大熊、双葉の近くのいわきへUターンした人も少なくない。
 
だが、会津がいいと残った人たちもいる。その人たちと会津の人たちにいまひとつの大きなつながりが生まれている。マスコミにも乗らない、小さな町の話題かもしれない。だが、共に人形をつくるという中で、大きな癒しと心の回復、PTG(外傷後成長)が生まれているに違いない。
 
あるいは、避難先の地域の祭りに参加したり、逆に、避難した人々の地域のまつりを避難先の町で再現する。それも同じだ。

難しい議論や理屈ではなく、ただ、お互いの地域にある文化を手を使って、身体を使って共有する。そこにこそ、あるべき地域連携、市民連携と協働の姿があるのではないか…

いま私は思っている。この二つの映画と豊間小学校子ども映画学校を取材したドキュメンタ―を通じて、小規模でも、多くの地域で上映会を実施しよう。そして、そのつながりをもとに、福島県内の小さな地域の見直し、伝統芸能、市民芸能を守り、育てている人々の姿と声を紹介しよう。

人口の減少はとどめようもない。高齢化のつぎには、若い女性の地域からの離脱がくる。そして、地域そのものが失われるところも出てくる。その次の未来に、それでも地域の柱であった、そうした伝統をなにかの形で残しておく。
 
再生の糸口は、その誇りからしか生まれないからだ。