秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ほめ言葉は使わず

母校の創立記念日での講演に関する生徒たちのアンケートの一部を校長先生が送ってきてくださった。

代表的なものを抜粋されたものだろうから、いただいた意見が生徒たちひとりひとりのすべての声ではないと思う。
 
しかし、建前の正しさを鵜呑みにするのではなく、自分なりに問うことの大切さや平時にあって守られる互いへの尊重、もっといえば、互いの自由がある日突然失われるという現実への認識。その認識の上にたって、自分たちの日常を見つめ直し、問い直していく姿勢が本当の意味での自由を育てるのだ…というメッセージは、幾人かの生徒の心に確かに届いているように思えた。

問いという言葉をずいぶん連発した。実際、パワーポイントの資料でも問いの大切さとそこから導き出される、独立自尊、自主自立、自由自治の意味と価値を伝え、そのためにいま、そして未来を生きることが若い世代の自分たち自身の時間を自由なものに変えていくのだと語った。

映像の力、とりわけ震災直後の被災地の姿とそこで取材した人々の生の声は強い。多くの生徒たちが、一応に上映した15分のショートムービーに登場した被災地の姿と声、そして、それを東京の中学生たちが視聴して涙ながらに語った様々な思いと言葉に共感している。
 
自由の話と東日本大震災のいのちの話、そして、いじめの話がどう結びついているのか…それがどの程度、伝えわり、彼らなりの形で消化してくれるだろうかと不安な点もなかったわけではない。

しかし、彼らは彼らなりの文脈の取り方で、それぞれに、まさに自由に解釈していくれている。

資料でおくられてきていない生徒たちも含めて、人生のあるとき、たまたまなにがしかの縁あって、直接ふれあうことのない、自分の親世代より年上の人間から話をされる…そのわずかな出会いと言葉に、無視でもいい、反発でもいい、共感でもいい、学びでもいい…なにかを感じてくれればそれでいいのだ。

否定賛同、いずれにしても、若い人に投げるべきは、心が動く…という状態をつくってあげることだと思っている。終わっていく人間にできるのは、せいぜいそれくらいのことしかない。
 
心が動く…そこにはかならず、人は問いを持つからだ。いい子いい子、よしよし…といったほめ言葉ではそれは生まれない。だが、ほめ言葉を使わずに、あえて、そうすることが、本当の意味で、愛情を伝えることになる。
 
オレは、厳しい人、冷たい奴、勝手な奴といわれながら、それだけは果たしていこうと思っている。