秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

国民栄誉賞と民度の低さ

会津中通り浜通り…。福島県内を今年に入ってから会津に2度。中通りに2度。そして、いわきに2度来訪した。まだ回りきっていない。
 
中通りは特に南北に広い。前回は南を中心に回ったが、取りこぼしもあれば、伊達や国見、福島周辺はまだ手が届いていないのだ。
 
また、地元NPOに関係している仲間に尽力してもらっているが、相馬・南相馬の作業も進んでいない。会津は、協働している会津地域連携センターさんにお願いしてあるが、4月中旬から桜と連休と続き、実質手が回っていないのが現状だろう。いずれ、会津へも3度目の来訪をしなくてはいけないと思っている。
 
会津でも、いわきでも、形は違うが、いま人が多く流入している。だが、いずれの地域でも、このにぎわいを普通だと思ってはいけない…という冷静な思いがある。
 
そして、中通りは、浜通りのような目に見えて大きな被害がない分、公共事業など復興関係の大規模予算が降ってくることがない。一時的にでも、経済が回る環境がない。あるのは、線量が多いというマスコミの情報流布による風評被害だけだ。

とりあえず、八重の桜でなんとかいまを凌いでいる会津でも、農産物における風評被害は大きい。浜通りでは公共事業予算や復興事業関連予算で大規模プロジェクトを当て込んだ人、物、金の動きはあっても、現実には仮設住宅生活や借り上げ住宅生活が続いている。農水産業は復興の足音も遠い。
 
そうした人々の状況や現実を見続けていると、今日の国民栄誉賞の式典が仕組まれた、にぎわいの演出にしかみえない。いや、実に軽薄にしか映らないのはオレだけなのだろうか。
 
株価を上げ、景気がよくなるという期待感で消費が緩む。そこに、昭和の残像としての国民一致団結精神を煽る。明るい材料と明るい表情ばかりを強調し、社会のいまから人々の目をそむけさせる…
 
今回の国民栄誉賞と授賞式。どう考えても、渡辺恒雄安倍晋三、それを取り囲む読売グループと経済界が音頭をとって、政治的に仕組んだものとしかいえない。
 
日本国中の人々にとって長島茂雄はスターであり、読売巨人軍が日本を代表するプロ野球チームといった前提で、すべてを押し切ろうとする強引さしか感じられない。実に国民に対して失礼であり、不遜な行いであり、品格がない。
 
それどころか、実に内向きなにぎわいのつくり方だ。終わってしまった昭和のスターを持ち出し、終わってしまった高度成長期の昭和を謳いあげる。それによって、自信を持ち、誇りを持たせる…???? 

戦後70年近い歴史の誤りを糺さず、それによって失われた地域力の低下や国力低下の元凶をみつめず、かつ、新しい時代への新しいフォルムを見つけ出そうと世界とつながる道を閉ざして、なぜ、いま懐古主義に走るのか…

東日本大震災がこの国に教えた数多くの教訓と現実をひとつも未来へ生かそうという思いは伝わってこない。

昔はよかった。戦前の教育はよかった。高度成長期はよかった…そうした輩が増大するこの国に、福島を生かす力も、東北を変えていく力もない。それをよしとする、この国の民度の低さは救いようもない。