秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

いわき紀行3 臆病であってはならない

遠野産業振興事業協同組合との出会いは、FMいわきのW社長がつくってれた。
 
震災の年に開催した「大いわき祭」に農産物の参加が少なく、それを心配して、いわきの農業の中で、地域の特性を生かしながら、新しい取り組みに挑戦しようと10年ほど前に発足した組合を紹介いただいた。
 
遠野というと、都会の人やいわき以外の地域の方は、岩手県のあの、遠野(現遠野市)を思い浮かべる。柳田國男民俗学研究で一躍有名になった、古くから日本の伝統的農業文化を生きる地域だ。

だが、いわきの遠野は、スパリゾートハワイアンズまで車で5分程度。温泉町、湯本へも近い。確かに、農業、林業を中心とした町で、これといった特色がない田舎町ようにもみえる。が、林業が盛んだったころの名残で、製材所が多く、また、遠野和紙は希少価値が高く、かつては重宝がられた。

組合のHさんやSさんとは2年程の付き合いになるが、地元自慢の自然薯はもとより、京野菜の栽培、山葡萄をつかった遠野ワインの製造、最近では、復活した地元の祭り「満月祭」にちなんで、日本酒づくりにも挑戦している。今年からは、遠野和紙の復元に挑戦した。

これまでは自然栽培の顧客がいたが、震災と原発事故の後、風評被害でリピートが途絶えた。震災前から抱えていた、少子高齢化の問題と農林業の限界に、有志を集めて活性化を目指し、10年。これからというときに震災がきたのだ。
 
10年前、約6000人ほどの町で、遠野以外の参加者も集め、75世帯ほどで組合をつくった。このままではいけない…という危機感からだ。

東京にいると、通勤時間2時間というのは不思議ではない。1時間以内は普通。ところが地方では、通勤や通学に1時間以上がかかると、それはもう恐ろしく遠く感じる。
 
オレも上京してすぐ、多くのサラリーマンが通勤時間45分から1時間が平均と聞いて驚いたのを覚えている。福岡でも30分がいいところだったからだ。しかし、いまでは福岡でも通勤時間1時間~1時間半は当たり前になっている。

都市にいかに人が集中しているか、いかに地域では雇用を吸収できていないか、この数十年での変化がそれだけでもよくわかる。

その中で、遠野にこだわり、少子化をとどめる術を農業や林業、それらを打ち出した観光によって見出そうとしている…ここでも、きっとこの10年、様々な軋轢や対立があったに違がいない。そして、いま風評被害の前にきっと苦戦している。

なんでもいい。これまでと違うことに挑戦することだ。それが途中で終わっても、あるいはうまく進まなくても、変わろうとすることに臆病になってはならない。

その歩みそのものに、ヒントがあり、チャンスがあり、新しい何かとの出会いがあり、道がある。