秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

映画の力

震災がなければ出会えなかった人たちがいる。わずか2年と9ヶ月。だが、その時間は震災、原発事故被害、風評被害…それにまつわる復興、復旧、そして再生、新生という動きの中で、じつに濃密な時間だ。
 
おそらくは、仕事やなにかの仲間の出会いであれば、わずかこれだけの時間で、まるで何十年も前からの旧知のように、冗談を言い合い、揶揄を飛ばし、互いにそれを楽しむ…ということはできなかったと思う。
 
福島の人とは東京で、須賀川市いわき市福島市白河市出身者との縁があっただけで、福島県内のどこにも震災まで訪ねたことがない。そんな人間が福島の地元のこうした輪の中にいられることだけでも幸せなことだと心から思う。

喜多方、会津若松、国見、福島、二本松、須賀川、鏡石、塙、そして、いわき、相馬…そこに、いついっても、ああ、久しぶりといえる顔がある…。東京でも、福島県出身者と会えば、ああ、久しぶりといえる馴染みの顔がある…。

それができたのは、やはり、震災の年、開催した「大いわき祭」。昨年の「福島東北まつり」のイベント事業が大きい。苦労しながら、いわき、福島、東北の応援と情報発信を…その願いに、多くの人が協力してれた。

福島と特別に深いつながりあったわけでもないのに、どうしてなのか…と問われて、じつは、正しくそれに応える答えを私はずっと持っていない。
 
ただひとつ。震災による被害、津波被害、原発事故被害…東北三県の中でも、その幾重にも重なった被害と苦しみは、ひとりの日本人として、それを見てしまった男として素通りはできない…人が聞けば、いまどき時代遅れな…そういわれてしまいそうな、そんな単純な思いがあるだけだ。
 
できれば、これら複合した被害と苦しみ、そして悲しみを、自分たち地域の明日への糧に変え、いままでどこの地方も取り組みえなかった、中央依存から脱却した自立した地域づくりに挑戦してもらいたい…その願いはある。
 
いつかそれが、ひとつの地域モデルとなり、エネルギーにおいても、先端のSmart Cityに取り組み、脱原発から見事に地域に新時代の幕を空ける、FUKUSHIMA MODELを生み出してほしい…その夢はある。
 
MOVEがSmart City FUKUSHIMA MOVEというソーシャルネットワークをFBを使って立ち上げているのには、そんな理由もあるのだ。
 
そして、それらの取り組みが海外から評価され、原発事故を乗り越えた世界に類のない成功事例として、FUKUSIHMAを世界に発信してもらいたい…その期待はある。
 
だが、そうした願いや夢や期待の基本にあるのは、震災後出会い、旧知のように付き合うようになった、たくさんの福島の人たちとの縁しかない。国政でも、県政でも、市町村行政でも届かない、普通に日々を暮らす人たちと痛みと喜びを共にできる人間同士のつながりだ。
今年、私の財布の限界もあって、「福島東北まつり」は、来年5月以後に延期した。だが、トヨタ財団に助成いただいているSmart City FUKUSHIMA MOVEの充実と発信をこれから本格化させてなくてはいけない。

その思いから、東京にきてもらうまつり以上に、東京から福島を知ってもらう、「福島応援学習バスツアー」を実施しようと考えている。私自身が福島で見聞きし、人と知り合う中で出会った真実を他の多くの人たちにも体験してもらいたい…
 
自社の映画制作の時期ともぶつかり、福島東北まつりとは別の意味で厳しい時間調整の中に投げ込まれることだろう。

だが、私は信じている。私が知る福島の人たち、その人たちにふれれば、きっとその人たちが私と同じ、時代遅れといわれても、見過ごせない、大事なものがそこにあることに気づいてくれるだろうと…
 
そして、それが私の映画の力になると信じてる。