秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

日常を問うこと

不思議なものだ…
 
ショートフィルムの作品で行ったいわきロケ。じつは、一足早く慰霊に伺う気持ちだった。撮影後の編集作業もあり、MOVEのSNSネットワーク事業の関連するセミナーの資料づくりや会津との連絡業務で今年の慰霊祭には顔を出せないとわかっていたらだった。
 
それがいろいろな編集段取りの都合で、データの変換や編集機への取り込み作業を終えて、編集に実質入るのが、明日11日となった。しかも、この作品には、オレが震災後いわきで出会った薄磯海岸で収録した被災映像を挿入する箇所がある。

豊間・薄磯・久ノ浜の慰霊祭には参加できないが、やはり、あのときのあの風景の映像を東京で再度見ることになった。それも、3.11から2年になる明日に…。
 
いま編集作業はノンリニアが普通。いわゆる、PCを使ったデジタル編集。本編集前の事前編集、オフライン編集もノンリニアが当たり前。だが、うちはシステムの関係で、HDの収録素材をそのまま使えない。編集スタジオに素材を投げ込んで、うちのノンリニアで編集できる素材に落としてもらってから作業に入る。

その分、数日の時間を必要とする。同時に、うちのハードディスクにデータを取り込むのにメモリーではないので、テープの収録時間と同じ時間がかかる。そして、気づいたら、今日半日かけて先ほど、データの取り込みが終わり、明日からの編集となったのだ。
 
今回の撮影でも使ったが、実は、いま映画用に転用できる24P(1秒24コマが映画の基本。HD方式の圧縮高画質をP=プログレッシブ方式という)対応の小型カメラを購入する準備をしている。プロ仕様に応える小型カメラだ。

合わせて、本編集のデッキも入れる。そうなると、撮影の機動力が増すのと、スタジオとのいってこいがなくなり、編集でも時間の短縮ができる。当然ながら費用も軽減される。

実は、MOVEのIT事業で動画配信も今後行わなくてはならず、うちのカメラを貸し出す形をとるといつでも、思いついたとき、また、業者さんの都合に応じて、撮影に向えるという計算もある。

これからは、被災地の悲惨や悲しみ、苦難だけを取り上げるのではなく、そこに生きる人の姿や声、言葉、表情をそれ以外の地域の人々につなぐ時だと思っている。もっといえば、いろいろな思いを秘め、飲みこみながら、いまを生きる人の様々な表情を伝え、被災地とそうではない地域という括りから自由になり、つながれる道を探すときだと考えているのだ。

それには写真、動画ほど説得力のあるものはない。特異な情報や特質した情報ではない。そこに生きる、当り前の日常を伝え合うことだ。当り前の日常の底にある力強さややりきれないながら、確かな何かを築こうとする、思いを伝え合うことだ。

亡くなった方、地域を奪われた人々が守っていた日常とは何だったのか…自分たちの日常とは何なのか…それを問うことだ。

不思議にも、あの風景をもう一度、被災した2年後のその日に見るということは、そこにあった圧倒的な日常から、また再び学べということだと思う。