秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

始まってもいない 終わってもいない

一昨日は、いわき市の豊間小学校・中学校の体育館で、仲間のYくんがやっているPower of Japanの主催したクリスマス会に応援で参加。

午前中の仕込みが終わってみると、サンタ役ボランティアが130人もくるというので、サンタはまかせて、急きょ、広野町へ向かう。同日に、広野復興祭があって、FMいわきがPAほかイベントステージをまかされているというので、A局長の陣中見舞い。
 
激しい雨で、豊間のクリスマスも広野の復興祭もどうなるかと思ったが、なんとか賑わいは保てたようだった。ジャーナルのAちゃんは、取材をかねて、奥さん同伴。いわき福島復興オフィスのI社長も午後から豊間で合流。このところ、Iさんと一緒に動くことが多くなっている。
 
被災した海岸線、町ごと流された地域は、地域の再生の道が険しい。高台移転などの計画はあっても、なかなか地域住民の意見がまとまらないこともある。行政の手当てがその分、時間を必要とすることから、被災当時は何とか地域一体で移転を…と考えられたのが、いまは、次第にそれぞれの家庭や生活の事情で、当初のまとまりを維持することが難しくなっている。
 
借り上げ住宅や仮設住宅にいながら、なかなか外へ出ることもおっくうになってきたという人々も多い。さらには、避難先としていた場所での生活が次第に根をつけ、再び地元に戻るということを困難にしているという現実もある。

こうすればそれですむ…という簡単なことではない。いろいろな手当を複層して取り組まなければとても、みなにとっていい地域再生の姿は見えてこない。そのためには、いろいろな知恵の結集がいる。
 
ひとつの地域ごとにきめ細かく、国政の手当て、行政の手当て、民間の手当て、NPOの手当て、地域住民グループによる自助の手当て…といったこが絡み合わなくては難しい。そのための組織づくり、ネットワークをしっかりつくることだ…と改めて思う。
 
今朝は、朝から今年最後、かつ経産省農水省の助成で実施されるのは最後になるかもしれない、福島復興支援のイベントに参加してきた。
 
ここでも、Power of JapanのYさんを始め、聖心の女子大生さんたちが応援にきてくれてた。出店はIさん。一昨日使わなかったサンタの衣裳が大活躍。サンタの姿でいると、だれもが笑顔になる。気安く手をふり合える。着ぐるみキャラクターにハグされて、ハグをかえすw
 
とくに女性と子どもは反応が早い。若かりし頃、役者をやっていたスキルがこうしたところで役に立つ。 衣裳を着てしまえば、何にでもなれるのだw
 
売り場で声を出していると、富岡町から避難してきているという老夫婦が声をかけてきてくれた。「おのざきさんの店なのね。いわきにいくとよく買ってたわ」「なつかしいね、とまとランド…」。
 
浜通りのことを知らない人には、どうということはない会話に聞こえるだろう。だが、いろいろなものを失った地域のことを知れば、そんなたわいもない会話が胸の底で、熱くなる。「おからだ、気を付けてくださいね」。去っていく老夫婦にそう声をかけるのが精いっぱいだった。

いろいろなところで、復興という言葉で物を販売したり、交流をつくりだせるのは、今年いっぱいだろうという声が聞こえている。確かに、福島が福島として自立して、魅力をつくり出し、自ら伝えていくという努力はより必要になる。
 
だが、ささやかに、失われる前の地域の思い出を抱きしめている人たちがいる。暮らしの道はそれぞれかもしれない。しかし、自分が生まれ、育ち、親、祖父母、そのまた親たちが生きてきた地域を懐かしく思い、かつ誇りに思う気持ちを大事にしない社会や国のあり方でいいわけはない。

まだ、何も始まっていない。まだ、何も終わってはいない。