秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

生涯の恥

年内撮影を予定しいた自主作品。台本があがったのが先週で、1月末から2月始めの撮影となる。年明け、いくつかの制作協力会社との打ち合わせを経て、撮影に入りたい。話し合いと関心がもたれなければ、完全な自主作品として自社制作で進める。

一作は完全に福島を題材にしている。いわきも日帰り撮影を考えている。これを先行させて制作し、抱き合わせで、いじめ作品を一作。終って、3月末までに、高齢者を題材にした作品を予定している。こちらは、いわきにある仮設住宅と徳島の限界集落、そして、港区が取り組んでいる高齢者対策を取材映像で織り込む。

福島をそのまま題材にした作品と高齢者を題材にした作品。これをFUKUSHIMAから考えるシリーズとしてリリースする。すでに東映の来期の告知資料は提出済で、来年4月にはリリースされる。したがって、3月末までに撮影だけでも終わらせておかないと間に合わない。

うちにしては予算と規模が大きい。が、しかし。これはなんとしても制作する。MOVEの活動とは別に、オレの「仕事」を通じた福島支援、そして、地域新生の足掛かりとしてのひとつの応援歌だからだ。こういう社会教育映画形式の作品は、これで終わり、そのあとは劇場公開用の台本づくりに入る。

同じくこの期間、会津若松、福島中通、いわきで「地域新生ITセミナー」を行い、また、この間の「福島・東北まつり」で協働してくれた団体や参加業者さんたちとのネットワーク事業の最初の一歩をスタートさせる。
 
おそらく、来年4月までは、これまで以上に福島へ足を運ぶことになるだろう。しかも、いままで足を伸ばさなかった地域も訪ねることになると思う。しかし、それがまた、劇場用作品のあらたな取材やヒントにもなる予感がある。すべての回答は、現場にしかない。人々の生活の中でしか見えてこない。

実は、MOVEの活動をやるほどに、いろいろな方と出会い、現地で会いたい人がどんどん増えている。この目と五感で確かめたい空気がいっぱいある。そして、それを数珠玉のようにつなぎ、一つの輪にしようという思いがあふれてくる。
 
親しい友人の、オレの仕事のことや生活のことを心配してくれる幾人かが、福島や被災地のことばかりやり始めた頃、異口同音にいっていた。「いつまでやるんだよ。映画人としてやれることがあるだろう。そっちを優先したらどうなんだ」。確かに。
 
だが、オレはそんなに器用ではない。また、現実を目の当たりにすれば、自分の気持にケリがつけれらない内に、そこそこの作品をつくることでいかにも福島や被災地を取り上げました…などという一時の感情にまかせた軽薄なことはできない。そんなことをするくらいなら、別作品をつくる方がまだ道義にかなっている。

しかし、目に入ったものを見なかったことにも、無視することもできない。ならば、それと向き合い、自分の胸に落ちるまでやり進めるしかない。それがあるべき作家の姿だと思う。マスターベーション私小説を書いているわけではないのだ。プロとしての仕事の作法と流儀がある。

要領よく、時勢に乗りたい奴や時流をつかみたい奴はそうすればいい。しかし、それをしては、何かでうまくやれても、人として、生涯の恥となる。
 
この写真はそれを教えてはいないか。

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