秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

本当の主役

主役がだれであるか。主役がだれでなければならないか。
 
物事をうまく進めるために必要なことのひとつにそれがある。
 
ところが、いまはだれもが主役になりたがる。否、だれでもではない。主役になるべき人が主役にならず、主役であるべき人でない人間が主役になりたがり、そして、なる。そこにいろいろな問題や齟齬、対立が生まれてしまう。
そればかりか物事の本質や物事の進むべき方向がまちがってしまうということが起きる。
 
主役は必ずしも、人とは限らない。自然であったり、歴史であったり、文化であったり、あるいは、人の思いであったり、願いであったりする。
 
しかし、それさえも、主役になりがる人は主役の座から引きずり降ろしてしまうか、食い物にしてしまう。主役になりたがる人は、本来、物事の根幹になければならない、そうした見えない何かをまるで見えるもののようにして、身にまとっているふりをする。

来月のいわき市立豊間小学校での「福島のこれからを考える」映画無料上映会。昨年9月頃からの豊間小通いと復興協議会まわりのおかげで、さらには、昨年のバスツアーと今年2月の撮影もあって、地元の三地区合同主催という形になった。
 
そうした方が…と知恵をくれたのは、小学校の先生たちだ。公民館では人の収容にも限りがある。ならば、小学校の体育館を使ったら。地域を舞台にした映画なのだから…とアドバイスをいただいた。

遠慮がちに、地区の区長さんたちにどうでしょうかと声をかけると、すぐにみなさんが動いてくださった。橋渡しをしてくれたのは、地元の取材を続けているSカメラマンだ。Sちゃんが取材の中で地元のみなさんと培った信頼関係がはずみをつけてくれた。

そして、私は思った。ああ、やっと、地域を主役にしたひとつの事業が実現できる…。

福島に生まれ、福島で育ち、福島の風と雲の下で生きている。そうした人たちが、物事の主役にならなければ、私やMOVEの活動は意味をなさない…3年前からずっとそう思ってきた。

東京でのイベントも、いずれは東京在住の福島出身者とその縁のある人と福島在住者、それにイベント開催地とが実行委員会をつくり、実施できるような形にしなくてはいけなとも思いつづけてきた。

そう。そうなれば、MOVEという団体はもう必要なくなる。だが、それを理想としてスタートしたのだ。
 
おかしいと思う人もいるだろう。不思議に感じる人もいるだろう。だが、そうなのだ。
 
そもそも、私やMOVEという団体が主役になり、有名になる活動でも、社会貢献をやっていると人前に出るためのものでもない。当座、そうせざるえなかったのは、理念をもった、基盤をつくるためだ。
 
導火線のような役割でよく、私の理念が福島のだれかに、福島のなにかに火がつけば、それで導火線の役割は終わる。また、終わらなくてはならない。それが、福島の人の自立であり、福島の人が誇りと自信を回復する道だからだ。その一端や契機となることが大事だったのだ。

最初の東京でのイベント開催のときから、陰ながら声援をいただいている、コミュニティ放送の社長さんから、今回の上映会への励ましの言葉とできる限りの応援をするというメールをいただいた。
 
それは、社長さんも私と同じ思いをお持ちだからだ。三区主催。共催としてのMOVE。その形こそが、あるべき地域支援の姿であり、あるべき福島の姿だからだ。

否、それは福島に限らない。全国のいろいろな課題を抱える地方においても、海外の紛争地域においても、被災地域においても、目指す姿は、その土地で生まれ、その土地の水と食で生き、その土地に足跡を残そうとする人々が主役でなくてはならない。