秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

現場から

一昨日のNHK朝の情報番組に、恵泉女学園大学院教授の大日向雅美先生が出演してらした。相変わらず、ソフトな語り口で、人の話を最後まで聞きとどけようとする姿は美しかった。
 
だが、そんなことを面と向かっていえば、大日向さんは、「秀嶋さん。そんなこといっても、何も出ないわよ」と笑いながら、きっとおっしゃる。何かの打ち合わせで、西麻布のご自宅兼事務所にうかがったら、夜も少し遅い時間に果物をむいてくださっていた。
 
話に夢中で、あまり手をつけないでいると、「あら、秀嶋さん。果物、嫌いなの?」「いえいえ。好きですよ」「うそでしょ。だって、全然手をつけないじゃない」「いや、だから話に夢中になって…」「ドライフルーツあるのよ。私、大好きなの。これだったらどう?」といった調子の方だ。いえ。ドライフルーツより、生の果物の方がスキです…とはいえなくなったw
 
しかし、大日向さんの果てしなくお嬢様風なそういうこところが、楽しく、心地よくてしょうがいない。車でご自宅までお送りしたときも、ランチを御一緒したときも、とにかく、時間を忘れてしまう方だ。
 
自民党政権のときも、そして民主党政権になってからも、内閣府子育て支援事業や保育園支援事業の専門委員としてかかわられ、ご自身も、港区の助成を受けて、子育て支援事業を青山でやっていらっしゃる。プラス、講演もあれば、執筆もある。その間に、子育てに悩む母親たちの相談と自立へ向けた取り組みもされている。

もう年齢も重ねられて、体力的にも大変だろうと思うが、つらい顔はされないし、常に前向きだ。
 
マスコミや多くの人たちは、大日向さんが家庭問題や親子の問題についての専門家という見方をしてる。だが、実は、大日向さんが家庭や親子の問題を通じて、とらえようとし、かつ、変えていかなくてはと考えられているのは、社会のあり方だ。
 
いまの時代に合った、地域の回復がなければ、子育て支援、子育て力も回復することはできない。男性、女性の働き方や生き方を変えていかなくてはいけない。それを生み出せる社会制度や法制度をと整えなければいけない。女性自身を含め、女性が自立する社会をみんなでつくれば、いろいろな課題の克服策がみえてくる。
 
簡単にいえば、その視点をしっかりもっていらっしゃる。だが、それを大上段に語るのでもなく、アカデミズムの殻の中で唱えるのでもなく、自ら現場に身を挺して、実践されている。だから、お母さんたちの支持があるのだ。
 
精神科医の齋藤環さんも臨床の現場は離れないと語られたことがある。現場に足を置く。自らの時間と体力、精神を現場に費やす。その姿にオレは共鳴している。

国政にいる政治家の信頼や信用がなくなるのは、こうした現場に足を置くということをやらないからだ。現場に身を投じなくては見えないものが、この世の中にはたくさんある。それもただの数週間、数カ月、身を置けばいいのではない。
 
だが、あれもこれもと手を広げることはない。なにかひとつでいい。大日向さんであれば、家庭や子育て、齋藤さんであれば、精神科医療…そうしたひとつにしっかり足場をおけば、いまのこの国、社会、地域、家庭が抱えている問題の深層は見えてくる。

それが見えた上で、現場の現実を生きる。だからこそ、ほかの識者や専門家とは違う言葉が生まれ、人々に少しだけ明日の希望を見せることができるのだ。

これからのリーダーはそういう人ではくてはいけない。