秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

新しい道

「福島を救おう」プロジェクトで収録した、いわきの映像の編集作業を始める。
 
被災地の映像を幾度となく見る…というのは、つらい。心も痛む。とりわけ、ある少女のバレボール優勝写真と賞状は重い。
 
今週金曜日に日帰りで、石巻へ向かうが、そこでも幾人かの方にコメントをもらい、被災地周辺の映像も収録することにしている。
 
支援活動やボランティアで現地に入っても、与えられた作業をこなすのがいっぱいで、被災地の多くの人と深く交流することは、実は難しい。
 
やったという実感はあるだろうし、支援やボランティアの中で学ぶことも多いだろうが、それは個人やある特定の集団での成果であり、あくまで作業。どちからといえば、参加した側の体験学習のようなものだ。
 
被災地の支援にはいろいろあっていいから、それはそれで意義あることだが、そうした支援はやがて、必要なくなる。また、なくならなくてはいけない。
 
人の手をかりずとも、自分たちの手と足で歩けるようになること…それが最終的な着地点でなくてはいけないからだ。
 
被災しなかった人間たちが引き受けなくてはいけない課題は、実は、それ以上に大きい。自分たちの生活のあり方も含めて、自分が、地域が、社会が、国がどうあるかを自分たちの生活の中で模索する。それが本来の支援。
 
数日前、商工会議所の異業種交流会に参加してきた。震災直後は余震もあり、自粛されていたが、今月になって定例の交流会が復活した。が、しかし…
 
そこで語られている言葉のなんと、現実感のないことか…。なんと震災以前の発想のままで、自社アピールをする人たちの多いことか…。
 
自社事業を発展させるために、特徴を生かすために、どこか手を貸して欲しい。自社の商品はこんなにすばらしい…確かに、そのための集まりだからといえば、それまで。しかし、オレはその姿に強い違和感と居心地の悪さを覚えていた。
 
自分の会社をみつけ、手を貸してくれる異業種が欲しいというおねだりばかりで、自社がこうしたことのために、碑になるから、仲間が欲しいという声はひとつもなかった。
 
また、これまでの事業のあり方を変えたい。ネットワークの中で新しいビジネスモデルを探したい…といった言葉がひとつもなかったからだ。結局は、いままでの自分たちの業界、業種、事業エリアの域内の発想を超える提案やアイディアがない。他とつながろうという見識と意欲がない。
 
同じような会社が同じような希望と要求を繰り返す…それで、震災後のこれからの時代をやっていけると、この人たちは思っている。つまり、自分たちの、そして社会の、国民の価値観や意識が変わっていることに気づいていない。
 
この国、社会にはリーダーがいないのだな…と改めて思う。小さな小山の大将たちは有象無象いても、社会や地域、国、そして他国、世界を視野に入れられるリーダーがいないのだ。だから、時代が見えていないし、人心が読めていない。
 
マニュアル通り、これまでの経験通りにしか言葉を発せない。それは、人の心も動かさなければ、社会も自社のあり方も変えてはいけない。
 
いまは第二の復興のとき。求められるのはパイオニア精神にあふれた見識あるリーダーなのだ。それは家庭でも中小企業でも、地域でも同じ。社会の底辺にその広がりがなければ、人は新しい道を歩こうとはしない。