秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

縮まない人間関係

かつて仕事でお世話なったり、微力ながらお手伝いさせていただいた方たち。
 
そうした方々は、オレより年齢が5歳以上、上の世代がほとんどだった。30代半ばで独立したとき、こんなオレをおもしろがり、仕事を投げてくれ、いろいろなステージに立たせてくれたのも、いわゆる団塊世代といわれる人たちだった。
 
理由は簡単で、オレが30代半ばから後半、そして40代半ばにかけて、そうした方たちが40代後半から50代にあり、発注の決定権、決裁権を持っていたからだ。受注や打ち合わせの窓口はそうした世代の方たちだった。
 
受けた仕事の都合で、予算のない発注をお願いしても、何とかやりくりをつけて、形にしてくれるのも、同世代の管理職か、その上のそうした人たちだったのだ。

当然ながら、そうした人たちが退職する中で、うちの受注仕事は目減りしたし、かつてのように、おもしろがって発注してくれるような豪胆な人もいなくなった。

多くの方たちが、退職されても、あれこれ新しい生活を築くのがいまの常識だが、その姿を見ていていつも思うことがある。
 
それまでの仕事が、いかにクリエイティブな仕事であれ、一つの会社で退職まで来た方、とりわけ、会社以外の人間関係や生活交流を持っていなかった方たちは、退職という年齢が近づき、いざ退職となると、一応にそれまでの輝きが薄れていくことだ。

女性は年齢を重ねるほどに、子育てを通じた地域との人間関係、趣味やボランティアといった活動の中で、人間関係が膨らんでいく。会社や業界という組織の中で、利害関係の中だけでしか仕事をしない男性は、その中で付き合う会社が限られ、交流を持てる人間も限られる。
 
ひとつのルーティンにはまると、自分が気の合う人、都合のいい会社や社員とか仕事をしないということも起きる。するとますます、世界は縮んでいく。要は年齢を重ねるほどに、男性の方が世界が小さくなるのだ。役職が高い。勤めている会社が大きいほどその傾向は強くなる。

Face bookを始めて来年1月で丸2年になる。リアルに会った方たちも多いが、それ以上に、リアルにお会いしていない方でも、毎日やりとりする中で、この通常だったら縮んでしまう人間関係が、ますます広がっていることを実感している。
 
もちろん、FBを初めて2ヵ月後起きた震災とそれを契機に始めたMOVEの活動という軸があったとも大きい。だが、それだけではなく、普段から旧知のように語り合える仲間、それが世代を越えて得られたことは大きな財産だと思っている。
 
「自分がこの年齢で、地域や世代の違う、会ったこともない人たちと何とも言えない感情を共有でき、意見の違いや考え方の違いは違いとして、交流し、実際に会い、共に何かをやれることは、本当に幸せなことだと思う。いままでの社会では考えられなかったことだよ」。同窓会で久しぶりに会った後輩にそういった。

ITツールはもちろん、使う人の使い方、使う上での姿勢や構えも必要なものだ。だが、利害や損得を越えて、強いメッセージと願いがあれば、それに共感し、共に語り合える仲間とも出会える。いろいろな齟齬があったとしても、ソーシャルネットワークはこうして、市民の交流ツールとして、人々を何がしか幸せへと導く力を秘めている。