秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

張りつめた糸

「福島・東北まつり」開催まで2週間を切った。
 
細々した連絡業務や確認作業はギリギリまで続く。構成台本も、決起集会へ向けた資料の訂正もやらなくてはいけない。
 
復興庁へのかけこみ後援申請の作業などのほか、東映がらみのプレゼンも週明けだ。月曜から18日までは、最後の追い込みのようなものになる。
 
実は、最後の1週間にゆとりをつくろうと詰めている。開催、直前だが、意図があって、福島県会津大学へ行く予定にしてあり、先方にもそう伝えてあるからだ。
 
数日前のことだった。
 
若い頃から自分のやりたいことだけにまっしぐらなオレの性格を鋭く見抜いて、数年前からいろいろと温かな助言をくださっていた高齢のSさんとブッティストの式典のあと、久々に呼び止められた。「今日、どうしちゃったの?…」。いつものオレらしくなく、覇気がなかったのが気になったとおっしゃるのだ。「なんか、今日の秀嶋さんの司会は心に届かなかったのよ…」。鋭い…とドキリとした。
 
この数カ月のオレの状態のことを話すと、「福島のことも大事だけど、心を奪われて、大事なことをおろそかにしてはいけないのよ」と、諭された。「私たちにできない、こんなにすばらしいことをやれる人なんだから…。でも、ひとりでできることじゃないのよ。わかってはいるでしょうけど、まわりの人にやらさせていただいているの」。

懐の深い、慈愛のある方だとわかっていたせいもある。尖がっているいまのオレの精神状態を鋭く見抜かれて、一瞬、緊張の糸が緩んだのか、思わず、嗚咽しそうになった。言葉にできないいろいろな思いを言葉でなく、それで吐き出させてもらった。自分よりずっと年上で、いろいろな俗世の悩みをご自身も生き、みつめ、生き直してこられた方だったからだ。
 
疲れと時間のなさもあって、ピンと張った糸のようになっている…と自分でも気づいていた。覇気がないのは、疲れもあったが、さっさと用件を片付けてしまおうという、その時間を大事にしない心がオレにあったからなのだ。卒なくこなせばいい…。その程度で、眼目はチラシやポスターを置いてもらうことだった。
 
ふと、おふくろが生きていたら、きっとその方と同じことを言われただろうな…と思った。張りつめたように、オレが何かに向っているとき、その危うさ、もろさをおふくろはよく知っていた。そのために、オレが強引になったり、周囲の人の気持をなぎ倒してでも前へ進もうとしたり、結果、足をすくわれたり、大きな痛手を負ったりする姿を見てきたからだ。
 
自分でもそのギリギリのところにいるという実感はある。これ以上いくと、危ういぞ…そう思っていた。
 
緊張の糸は、まだ解けてはいない。だが、自分の心にあることを指摘されて、自分の福島へ向かう構えを糺された気がした。そこに、何が見えていて、何が見えていないかは、オレにはまだわからない。それは、きっとオレではなく、いい形でも、よくない姿でも、人が教えてくれるのだろうと思う。

その数日後、幹事長室や復興庁との新しい出会いをいただき、いままでオレがやろうとしていた、この先のビジョンの協働の姿として現れた。しかし、そこにも危さはある…と気づかせてくれているのは、その方の言葉が大きい。おそらく、その言葉がなかったら、オレは提案された話に、もっと前のめりになってしまっていただろう。
 
焦らず、慌てず、たゆまず、休まず、たんたんと…。

写真は昨年に続き、無償出演していただく、TBSの吉川美代子さんとチャンジー・オールスターズのみなさん。
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