秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

新しいフォルム

昨夜は、震災後すぐの東京商工会議所異業種交流会で知り合い、FBで再生可能エネルギー事業の推進運動をやっている方がかかわっている勉強会に参加。持続可能社会のために、まずエネルギーから…ということらしい。

 
今月1日から、菅直人が総理時代に決定した、新しい電力の買い取り制度FITがスタートした。そこに合わせて、メガソーラー事業に大手企業が次々参入していることは知られている。京セラとソフトバンクがこの分野で提携した報道もつい最近のことだ。
 
実際、ソフトバンクは太陽光、風力、地熱、バイオマスのすべての分野で先行投資型の新ビジネスをスタートさせている。日立など大手メーカーはもちろんだが、森ビルなどの不動産、建築関連の企業の参入も進んでいる。当然ながら、買い取り価格が上がったことで、収益性が見込めると踏んだ異業種分野の企業が次々に自治体や地権者との交渉に入り、まさに、バブル状態。

しかし、設備投資や管理運営に大きなコストとリスクも伴うこうした事業は、大規模に展開しようとすれば、結局、大手の資本力、資金力のある企業でないと難しい。また、自治体側も体力のはっきりしない地元企業やNPO団体などには尻込みする。地元企業が立ち上げようとしても、資金調達の面、技術的な面で行政や金融の壁にぶつかっているのが実状だろう。
 
だれがが、脱原発議論でいっていた。大手電力会社、経産省の利権のもと原発が生まれてしまったのと同じことが、再生可能エネルギーにおいても起きなければいいが…。その不安は、確かに現実のものになりつつある。
 
地域から食の地産地消が奪われていったように、エネルギーの地産地消原発によって奪われてきた。今回の福島の原発もその電力は関東、東京という都市のためのものだ。FITによって再生可能エネルギーが成果を上げたとしても、原発と同じように、地域の雇用は生むが、そこでつくられたエネルギーが地域の資源として活用される保証はどこもない。
 
もちろん、やらないよりやった方がいい。EU、とりわけドイツのように電力供給の20%を再生可能エネルギーで実現している国もある。メルケン首相はこの比率をもっと高めようと脱原発宣言までした。
 
講演のあと、ある人がこんな質問をした。「エネルギーのことも大切だが、地域を建て直していくためには、エネルギーを含む、地域全体のあり方を何階層にもおいて、変えていく仕組みが必要なのではないか…」。また、ある人が意見を述べた。「エネルギー事業ひとつとってもそうだが、政治の問題を抜きにして、地域の復興や再生の問題は考えられない。それについてもっと考えてほしい」。
 
この団体は社団法人を目指しているらしいが、その定款は自然エネルギーの推進とコンサル事業に柱がある文言ばかりだった。認可をとりやすいように、シンプルにしているのかもしれないが、パーツの取り組みは、数人の意見にあったように、エネルギー政策そのものを変えていく事業にはならない。

また、再生可能エネルギーによって、古き良き共同体時代の精神と環境を取り戻そうといっても、それは不可能なことだ。いまの時代、そしてこれからの時代に求められる共同体のあり方は、懐古趣味の情感ではつくりえない。つくれたとしても、それはいずれ、また、人々に置き去りにされていく。
 
持続可能ということは、明日への持続が可能な新しいフォルムを生み出すということだ。