秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

だれが責任とってくれんの?

2週間ほど前、ずいぶんあってない古い友人から電話をもらった。「原発事故地域の除染をやらないか…」
 
外車のディラーをやっているが、このところの不景気で内職をあれこれやっている。もともとヤンキー上り。ボランティアや社会貢献とは縁のないやつだ。最初は、ボランティ活動に手を染めたのかと驚いたのだが…。
 
「ひとり一日60000円になる。本人には35000円。宿泊は無料だが、メシ代だけさっぴかれるが、ひと月もいれば、それなりの金になる。100人集めてくれって頼まれたのさ。どこか当てはないか?」
 
奴は、いまオレがどういう活動をやっているか知らない。どうやら、どこかのブラックな不動産会社が副業で原発除染の会社を立ち上げたらしい。その経営者が奴の会社から車を買っている関係で、いい副業があるぞと声をかけられたのだ。要は、人入れ屋。
 
原発事故の復旧作業でもそうだが、除染でも、こうした裏社会とつながりのある連中が、国や県、東電の予算に群がっている。
 
実際のところ、事故の復旧作業にせよ、除染にせよ、被ばくを前提としている。防護服などで対処しているにせよ、被ばく線量の限界にくれば、人を代えるしかない。そうした人入れ稼業は向こう3年は確かな需要がある。しかも、原資も仕入もいらない。いわば、あぶく銭のように金がそうしたところに落ちる。
 
確かに、被ばくを前提とした仕事に率先して就こうという奴はそういない。いわきの湯本温泉旅館の女将さんから聞いた。宿泊している作業員の中には夜、ひとり泣いている人もいるというのだ。東電が全国の電力会社に声をかけ、各電力会社の下請け業者、そのまた、孫請け業者に復旧作業員を募った。
 
電力会社から仕事をもらっている以上、いやとはいえない。孫請けともなれば、従うしかない。会社の経営者に会社存続のためにといわれれば、断われない。それを断れば、地域の仲間の枠からはずされてしまう。きっと一番、気の弱いやつに仕事は押し付けられている。
 
しかし、自分の夫や息子が被ばくするのをよしとする家族はいない。原発にいくなら、家には帰ってこないで!といわれる。携帯で妻に電話をしても、親に電話を入れても、何の返事もないらしい。
一方では、オレの友人が知り合った会社ように、一瞬の荒稼ぎで金になればと、生活のたちいかないフリーターやリストラ後、仕事のない連中をかき集めている奴らもいる。また、闇社会の予備軍のように生きている連中を集め、原発作業や除染で働かせている。当然、素行がいいはずはなく、行った先で表には出ない問題や事件を起こしている。

いわば、原発事故にまつわる復旧や除染といった後始末の末端の現場は、この国の縮図のように、やりきれない連中の手で進んでいるのだ。現実はそんなもさ…といばそれまでだ。だが、
こんなことで、復旧や除染が信頼される形で実現するとはとても思えない。どこにも責任をとる奴、将来を見据えた奴がいない。

清潔なオフィスにいて、サラリーマン意識や官僚意識で責任感のない連中がつくった計画案をもとに、そうした現実を見ないまま政治も官僚も行政も大企業も、信頼などと無縁の復旧マップをつくっている。
 
瓦礫処理によせ、除染にせよ。それだけの予算があるなら、国、行政、地域が一体となって、第三セクターでもつくり、責任の所在を明確にして、運営していけばいい。そこでの地域の定期雇用をつくり、処理だけではなく、その後の地域の汚染管理、環境保全再生可能エネルギーの推進を行う組織にすればいいのだ。
 
そうした筋論が通らない。それは、人にはやってもらいたいが、自分はいやだという当事者意識の欠落だ。沖縄の基地問題にせよ、瓦礫処理の受け入れの問題にせよ、除染処理の問題にせよ。それがある限り、だれかに責任をなすりつけあう醜い姿は、いつまでも続く。
 
この国が、地域がいくら元気で美しい顔を装ってみても、それが変わらない限り、本当の意味で、未来ある国になれはしない。