秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

復興は?

選挙もあって、あちこちでTPP、原発を含むエネルギー政策、沖縄・竹島尖閣につながる安全保障、景気浮揚策などなど…あれこれ日本の未来の指針についての議論がさかんだ。
 
だが、復興についての議論がまったくない。選挙の争点とならないからだ。
 
しかし、原発を含むエネルギー政策にせよ、景気浮揚策にしろ、被災地の復興と再生の明確な指針なくして可能なのだろうか。
 
未来へ向けて、この国になにが欠けていて、なにを見落としていたのか。今回の震災とその後の遅滞した復興事業を見ればすぐにわかる。行政システムの問題もあるが、それよりも地方というものの自立と活力、第一次産業の確保と維持、発展がなければ、どのような制度設計も、どのような外交政策も、あるいは、どのような安全保障政策も根本から揺らぎ、成立しないということだ。
 
当然ながら、第一次産業を主とする地方、地域の側から見れば、TPPも、原発を含むエネルギー政策も、その他の課題にもどういう対処が必要かがくっきりと見えてくる。
 
しかし、いまの政治家たちは、相変わらず、都市や都会の側からしか国をみようとしない。大阪という都市から、あるいは、東京という都会からしか、道州制を考えない。
景気浮揚も都市、都会に生活する人々の視点でしか考えない。だから、この国がかかえている本質的な課題がみえていない。

消費税の地方税化などという考えも、大阪や東京でしか生活したことのない人の考えだ。島根や鳥取といった税収のない地域や弱い地域では地方交付税がなくなれば、行政予算は立ちいかなくなる。ことほどさように、一長一短にこうすれば、こうなるで片がつくほど簡単でも、安直なことでもない。

システムや制度の変更は必要だ。だが、そのために取り組まなければいけないことは、国防論に花を咲かせることでも、円を増刷すれば事足りることではない。
 
人々の生活の足場をきちんと確保し、安定させることが先だ。その最初にとりくまなくてはいけないのは、被災地の生活の足場、次に雇用不安にある若年層や生活不安にある高齢者を含む人々の足場だ。つまりは、地方の足場であり、都市においても、都市の利便性や優位性から落ちこぼれている人々の生活の足場、そして、そこに生まれる安心と安心からつくられる力強い歩みだ。
 
方法はいろいろにある。議論もいろいろにある。あっていい。だが、少なくとも、都市や都会の側からではない視点とまなざしがいる。復興、再生、そして新生というラインからこの国のあり方を変えていくことができる。そして、そのラインを歩む政治家が出てこなくてはいけない。