秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

Cash Mob

昨夕のTBSのニュースで、Twitter・ FBといったSNSで知り合った仲間が20人以上集り、ある日、地域の閑古鳥の鳴く商店に結集し、買い物をしていく…という運動を伝えていた。いろいろだが、基本20ドルの買い物をすることがルールになっている。Cash Mobといわれ、いま全米に広がりつつある。
 
Mobとは悪ふざけといった意味。このところアメリカでは、客の少ない商店をねらい、2・30人の集団で堂々と窃盗をやる連中、Frash Mobが頻発している。すっとどこからともなく集り、有無をいわせず盗み、フラッシュしてどこかへ消えていく。悪質だし、不気味だ。
 
だが、これにヒントをえて、始まったのが、それとは真逆な善意の運動。キャッシュ・モブ。いかにもアメリカっぽい。
 
基本、どこかのボランティア団体やスポンサー企業がバックにいるのではない。あくまで、SNSで知り合い、顔も合わせたことのない連中が、連絡を取り合い、一緒に買い物を楽しむ。ねらいは、大規模スーパーなどの進出で疲弊している、地域の商店街を支援するだけ。代償や見返りはない。
 
しかし、突然、クリスマスイブのようににぎわった店の店主は、今度は自分自身がキャッシュ・モブになって、またどこかの商店でお金を使う。
 
一見、アメリカらしいジョークに満ちた、思いつきの遊び…のように映る。しかし、ここには、重要な地域再生の提言が込められている。
 
いろいろなところで最近、語っているが、大資本をバックにした大型店の出店は疲弊した地域再生の救世主になるとかつては思われていた。しかし、それは、一部限られた雇用を吸収してくれただけで、結果的には都市的消費に地域を隷従させ、地域の疲弊を促進させた。
 
ひとつには、地域内で金の循環を生めなくなったからだ。吸収された消費は次の都市型大型店建設資金や地域とは無縁の食材開発、仕入れに向けられている。税収以外、地域に金がフローしない。
 
これはある地域に限ったことではなく、全国に金太郎飴のように広がってしまった。つまり、地域は、「ジャスコ的空間」金太郎飴空間に変わっているのだ。だが、これだけでは終わらない。地域商店や商店街の疲弊は、地域の特性を奪っていったばかりでなく、地域共同体のつながりも希薄にしてしまっている。

商店及び商店街というのは、生活情報の交換の場であると同時に、地域の見守りや教育力の源泉だった。それが疲弊していくということは、地域のつながりそのものをつくる場が喪失していくことなのだ。江東区や足立区では、これに気づき、10年近く前から商店街を軸にして、見守りや子育て支援、地域教育の再生を図ろうとし、現実に成功している部分がある。
 
キャッシュ・モブがだれの発想かは知らない。しかし、市民が自ら、地域を守り、立て直そうとする小さな試みであることはまちがいない。そして、SNSの広がりが、こうした運動を大きく膨らませる可能性をはらんでいる。
 
なぜなら、いつもいうように、これこそがこれからの時代に求められる市民による地域間連携だからだ。
 
そこでの消費をつくっているのはその地域の人たちだけではない。SNSによってつながった他の地域の人が、地域から減少した消費層の代役となり、かつ、また、その地域の人々が協力してくれた他の地域の消費層の代役となっているのだ。相互扶助。
 
それはいわば、新しい共同体としての質を持ちえる。なぜなら、さきほど述べたように、商店、商店街が地域づくり「場」の創造、拠点となりえるからだ。リアルな時間、距離の中ではなく、これがより一層SNSを活用すれば、リアルでありながら、多くの人々に共有できる情報となる。
 
それこそが、Social Net Project MOVEが目指すものだ。時代は、まちがないなく、市民協働主義社会へと静かに歩み始めている。