秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

人でしかない

9月の中旬に徳島で、「誇り」の映画上映会と講演がある。毎年、声をかけていただいて、欠かさず仕事をさせてもらっているのは、そこが限界集落へ静かに進んでいる地域だからだ。
 
オレがSmartCityFUKUSHIMA MOVEを思いついたきっかけは、じつは、全国でも上位の限界集落地、もしくはその予備地をかかえる徳島だった。
 
徳島県上勝町のITを活用した、葉っぱの採取と出荷は、NHKのドキュメンタリ-や報道で幾度も取り上げられ、かつ東宝で映画化もされた。
 
徳島に限った課題ではない。高齢化とこれに伴う限界集落化。それを引き起こしている、一次産業、地域産業、商店街の地盤沈下少子化と若年層の流出による、地域の伝統芸能など特色の喪失…。
 
一方で、大企業の誘致を軸とした、大都市や大企業に依存した体質。どこにいっても金太郎飴のような地域の増大が、結果的には、地方の魅力を失わせ、疲弊させた。
 
その突破口に、徳島県は県と市町村行政が協働して、まずITのインフラ整備事業にかなり早くから取り組んだ。山間部の渓流でも、Wihiがつながり、かつ、データの送信速度や驚くほど速い。
 
これを利用して、上勝町の事業も実現したし、いま東京や大阪のIT企業が研修をかねた、サテライトオフィスを徳島に相次いで設けているのもそのためだ。

もちろん、地域のことだから、すべての足並みがそろっているわけでも、協働のシステムが強固なわけでもない。進出したIT企業のいくつかが撤退するということも起きている。
 
だが、それを差し引いても、国土交通省限界集落対策資料、徳島県が研究委託した官民一体の研究団体が数年前から提示している、事業計画のマスタープラン、アクションプランは、現実的で、かつ、これからの地域のひとつの方向性を確かに示している。
 
実際に徳島に、この10年近く、映画の仕事でいっているオレには、それがよくわかる。高齢者の方たちの姿は、田舎にあっても、じつに積極的で学習意欲が高い。当然ながら、そうした場に出てこない、セルフネグレクトの方たちもいる。
 
しかし、いろいろなてこ入れがあれば、そうした都会にもある高齢者の課題に取り組んでいけるのではないか…そう思わせる空気があるのだ。

いまでもそうだが、中高年世代や高齢者にはITは覚束ない…。そんな考えや思い込を持つ人たちは多い。だが、オレは実感として、その、彼らの一部しか見ない視点はまちがっていると確信している。
 
動機付けと環境さえ整備すれば、世代を問わず、人は変わる。人が変われば、地域も変わる。
 
人を変えようとせず、制度やしくみばかりをいじって帳尻を合わせようとするところに、この国の政治や行政の限界があり、地域の疲弊や停滞を変える力が生み出せない理由なのだ。

Smart Cityが人にこだわり、人を中心にして、情報発信しようとしているのは、この思いがあるからだ。

徳島に進出したある企業のトップはいっていた。IT環境がいいという理由だけでサテライトオフィスをつくったのではない。限界集落の生活者、高齢者とふれあうことで、人とのつながりの意味や大切さを社員に学ばせたかった。ITは技術だ。だが、そこに力と魅力を与えるのは人でしかない…。

Smart City FUKUSIMA MOVE。そこにあるのも同じ願い。
 
 
写真は、震災後、出会い、福島の水産加工のネットワークを最初はじめた、おのざきの小野崎社長。MOVEの活動を最初に支えてくれた盟友。
 
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