秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

熟慮、構築、設計、提案

震災後、いろいろなボランティア活動やNPO法人の取り組みが展開した。中には継続が難しくなっている活動もあるし、1年が過ぎ活動の軸を他に移したところもある。その中で、継続性のある活動や事業を展開している団体や個人もいる。
 
しかし、被災地の事情や状況、そこに生活する人々の多様なニーズや志向があるため、個々のニーズに応えられないということもあるだろう。また、人間関係の築き方、つながり方によっては、支援団体や組織に対しての不安や不信を抱く人もいるだろう。
 
仲間と立ち上げ、いまはNPO法人の認可を受けたが、オレたちMOVEの活動も最初は、何が目的なのか…と行政の人たちには、不審視されていたw
 
被災地を利用して金儲けを考えている…というのは、実はとてもわかりやすい。実益への欲望が懐からのぞいていれば、それはそれで理解される。そうなると、被災地側も考えよう、取り組み方がある。そこでは親密さは問題ではなくなるからだ。しかし、まったく、それがないと不審の度合いは増す。確かに、基本、人というのは何かの計算で動くものだ。
 
実際、そうした団体や組織がずいぶん地域に入ったし、いま現在も、土木関係や原発関係でそうした人間がまちづくり事業や地域整備事業など名のもとにあちこちで実業をもくろんでいる。
 
それが押しなべて、すべて悪いとはいわない。しかし、すべてをwin&winで割り切る考え方が被災地やその周辺に馴染むとはオレにはどうしても思えない。実益を得てしまえば、その先に何があるのか…が見えないからだ。とりあえず、地域も助かり、オレたちも儲かった。それで、一つ事業なり、商売の利益が出たとして、それでは何ひとつ、地域の課題や問題は解決しないのではないだろうか。
 
という問いを繰り返すことを忘れてはいけないような気がしている。ある地域だけが充足しればいいのでもなく、また、ある地域というひとくくりですべてが解決できているわけでもない。同じ域内においても違いや格差がある。
 
何度もいうように、生活者ひとり一人が求める生活の質向上(QOL)は一律ではない。また、ひとつ被災地といってもそこに求められているニーズもひとつではない。
 
その課題に対して、何が有効なのか、その可能性があるのか…という問いが繰り返される必要がある。総合的でこれまでにない地域ビジョンがあって、初めて、その問いの答えがいつくか生まれる…とオレは思っている。

現実的な取り組みがいかに小さなものであっても、そこにビジョンと願いがなければ、いくら途中に地域の実益、協力する組織や団体の実益があったところで、震災が投げかけた抜本的な課題への回答にはならない。
 
震災から1年が過ぎ、その問いが希薄になっていくことが、もっとも危うい。すぐに何かをやればいいのではなく、そろそろ、熟慮と構築、設計をきちんとした提案を始めるときだ。