秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

せっせと機織り

前にも書いたが、昨年夏にまとめた被災地を取材した作品と一瞬にして町、学校が失われた映像やそこでのコメントを視聴させ、自分たち中学生に広がるいじめの問題をフリートークでまとめた2作品が、異例ともいえる反響を生んでいる。
 
実は、リリース当初からこうした反響があるだろうと考えていた。しかし、昨年末まで、その反応はいまいちだった。行政予算が防災や復興支援を優先させ、教育への振り分けが後回しにされていた…ということもあるだろう。国の予算編成をにらんみがら、予算の使途を抑制していたということもある。
 
しかし、制作者としては、あるしっかりした手ごたえを感じていた。手ごたえを感じるまで取材した映像の編集作業にもとりかからず、追加取材を続けていた。そして、100日法要のとき、亡くなった方々からお許しをえたように、いくつもの手ごたえのある取材ができた。これで、まとめられる…。その実感があった分、この作品は学校教育や都道府県市町村の防災、人権、生涯学習、ライブラリーの場で活用してもらいという願いがあった。

オレの仕事のうち、一番、シビアに作品の評価がわかるのが、社会映画や教育映画の販売用作品だ。行政や行政の外郭団体、視聴覚センターなどが試写会をやり、その年購入する作品をセレクトする。そこにひっかかることが第一だが、営業が紹介し、そこで視聴後、購入され、かつ、いろいろな市民セミナーや集い、講習会などで活用される。そこで視聴者の反響がいいと、口コミで広がり、他の行政や団体が購入していく…ということが起きる。
 
実際のところ、ヘタな劇場公開映画よりも実質的には観客動員は多い。貸出権付で試写会・上映会が無料ということもあるが、その分、値段は個人で購入できる価格ではない。制作予算の都合から有名俳優やトレンド俳優を使うことはまれだ。多くが、演技力はありながら、それほど知られてない俳優を使う。そうなれば、当然、台本と演出がいのち。
 
その上、一度、視聴でき、内容を吟味した上で判断される。制作者にとっては厳しいし、言い訳がきかない。しかも、それを最終的に視聴するのは市民だ。そこでの食いつきや反響がないと、あっという間に注文がとまる。

オレの会社は、販売を東映の専売にしてあるのだが、その東映の自主作品を含め、今期、うちの作品がダントツのトップを走っているらしい。わずか2タイトルでのこれだけの反響は異例だ。昨年、女性の人権シリーズ全3巻と尾木直樹に協力してもらい、いじめ作品をリリースした。それなりの反響はあったが、このときは4タイトルだ。今期は2タイトルで、昨年の4タイトルの売り上げとすでに並んでいる。

オレはどのような作品であれ、売上、動員、反響の3点セットがそろってなければいけないと確信している。ボランティや慈善事業、あるいは自己満足のためにやっているのではない。俳優が正当なギャラを要求するように、作品も数字がついてこなくてはいい作品とはいえない。ただ、売上だけ、動員だけ、反響だけという偏ったものは、やはりどこかに問題や欠陥がある。バランスをつくるためには、制作者がきちんとした世界観を持っていることだ大事になる。
 
とはいえ、うかれてばかりはいられない。いまやっている映画企画は、来期へ向けた自主作品ともリンクしている。せっせと、バランスを考え、機織りを続ける…今日この頃。