秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

気骨の回復

たとえば、ラグビーのような格闘技系のスポーツなどで、古武士のような風貌をもった選手がいるチームは強い。サッカー日本代表の長友などにもその匂いがする。
 
先日の福岡国際マラソンで日本人トップでゴールした、市民ランナーの星、川内選手もそうした風貌が漂っている。
 
人類学や医学の分野で、もうずいぶん前からいわれていることだが、体の強さは、物を噛む力と無縁ではない。そのために、顎の骨が発達する。
 
顎が発達しているから、固いものを咀嚼する力がある。だから、骨ごと食べる魚食などでカルシウムの摂取も用意。からだはきゃしゃに見えて、意外に骨太というのは、噛む力を軸にした食生活と結びついている。

プロ野球の投手は歯が弱くては一流の選手になれない…とある著名な元投手が語っていた。力を出すとき、人は、奥歯をかみしめる。強い力を出すためには、だから、歯が弱くては力が出ないし、出しきれない。
 
明治期前後から昭和初期、そして終戦後間もない頃まで、日本男子の顔は顎のエラが張っている…というのが普通だった。それに付随して、風貌もまさに古武士のような風貌になっていた。
 
いま、映画やテレビなどで時代物の作品をみると、昭和30年代の時代劇をみてきた人間には、衣裳、演技その他に物足りなさを感じるものだが、一番、物足りないのは俳優のスタイルがよく、風貌にも時代を実感させるものがないことが実は大きい。

体形や風貌が変わる…ということは、その精神性やあり方も変える。その過程の中で、人々から免疫力が落ち、耐性が失われ、キレる、自己中、KYというものが生まれていった。当然ながら、ひとつことを根気よくやり抜く力や人との交わりの耐性も失われている。
 
昨夜、FB親友のKさんとあれこれ情報交換をかねて話をした後、神田のいわしのうまい店に連れていってもらった。今回のいわき祭の実施直前に知り合った、福島市出身のAさんとその先輩というIさんも同伴した。
 
あれこれ明治期のことや昭和初期の歴史を語りながら、真摯にオレの話に耳を傾け、言葉を返してくるIさん。そこには、どこかなつかしい日本人の風貌があった。「この人に軍服を着させて、時代物の芝居をやらせたら、似合うだろうな…」。オレは頭の隅でずっとそんなことを考えていたw

道義や倫理、人の道。他者へのやさしさや弱い者への共感と行動…。この国が戦後66年で失っていった気骨は、こうしたところから回復していくしかないのかもしれない…などと考えた夜。