秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

エイリアンはひねくれものだから

人と心を通じ合わせるというのは、簡単なようで難しい。
 
言葉をつくせば、それですむことなのに、そこに愛情や思いがあるから、言葉をつくすことができない…肝心の話をしない…ということがある。
 
これくらい波風を立てるほどのことではないと思っていても、説明や会話がなければ、それは波風立てることにもなる。ありえない…と思わせないために、人は普段から、大事な人や仲間には、冗談をいいながらでも、実は心を尽くしているのだ。
 
しかし、人はそれを忘れる。だから、人と人の関係は、人が思うほど単純ではないし、また、考えるほどに複雑でもない。だから、ちょっとしたことで、大事なものを失うことがある。
 
昔、高校生の頃、片思いの同級生がいた。中学時代からのオレのマドンナで、3年になったときに再度、二人で会ったりするようになった。浪人の頃、そして、俺が大学の2年の頃までは、福岡に帰れば一度は会っていた。微妙な関係だったが、彼女はオレに異性としての好意はもっていなかった。
 
「気持は言葉にしないと伝わらないのよ…」と、その頃姉にいわれた記憶がある。確かに、オレは中学時代以外、その後、彼女に自分の思いを伝えたことはなかった。

高校演劇のコンクールで福岡に帰ったとき、好きな人ができた…ときいた。そして、それが妻子ある人だと教えられた。オレは、言葉がなかった。若かったオレは、中学時代の共通の友人の女性に電話し、同じ職場の上司というその男の名前を教えろと迫った。
 
別に殴りにいくわけではない。妻子持ちでいながら、本気で彼女のことを愛しているのか。場合によっては家庭を捨てて結婚する決意はあるのか…それが聞きたかった。偶然にも、その男性はオレの大学出身だったらしい。結局、彼女は友人のためにそれは教えなかったけど、オレの好きだった彼女にはオレからそんな電話があったことを伝えたらしい。
 
うれしかった…。高校演劇のコンクールの前日の夜、彼女に誘われていった喫茶店でそういわれた。オレは、結婚しようと生まれて初めてのプロポーズをした。それには、彼女がめんくらい混乱した。あとになって、気がついた。彼女は、その日、オレと寝てもいいと思っていただけか、異性としての選択に入れてくれた程度のことだったと思う。

結局、喧嘩別れのように別れた。次の日、いつも演劇コンクールにはきてくれていた彼女の姿はなかった。舞台装置を片付け、あたりを見回したが彼女の姿はなかった。オレの作品は、三年連続で優秀賞を受賞した。
 
次の日、東京へ戻る前に、さよならの電話をした。
 
「昨日、私、いったよ…」。驚いた。声をかければ…といいかけて、そうか、彼女はオレの背中と自分の学生時代にお別れをいいにきたのだな…と思い、それ以上は何もいわなかった。
 
以来、オレたちは会うことはなかった。その後、彼女はその男性と結婚した。男性の家庭をこわし、相手の女性と子どもを泣かせてまで、自分の幸せをえる。オレがほれた女だけのことはあるな…とその話を聞いて思った。再会したのは、それから20年近く経った高校の同窓会だった。

オレは、それまでも、それからもいくつも恋をしたし、結婚も離婚もした。だが、女の気持がわからない、鈍感さと要領の悪さ、思い込みはいまも変わってない。
 
この間の同窓会で、オレはふとそんなことを思い出していた。人と人が結びつくのは難しい。それはいまの大いわき祭からも同じ宿題を出されているのかもしれない…
 
この星では、きっと、エイリアンは、ひねくれものにしかみえないから…