秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

日本の夏のじめじめした事件

なんでぇ~というくらい、暑い。そして、蒸す。
 
台風が近いづいているせいもあるが、このじとっとした陽気には本当に参る。
 
大学のとき、オレは英文科に進んだが、教養学科時代に演劇関係の講座をとりまくった(当時、内の大学は東大と同じで教養が2年間だった)。かの河竹黙阿弥の子孫である河竹俊夫先生の日本演劇概論もそのひとつ。
 
なんたって、黙阿弥の末裔だ。品のいい鼻にかかった江戸弁で、すいすいと近松や黙阿弥の浄瑠璃、戯曲を解説されて、いつも聞きほてれていた。
 
その中でも、鶴屋南北の講義は秀逸だったと思う。ご存知、「四谷怪談」。実際に四谷の長屋で起きた事件を題材に南北が大きく脚色して出来上がった怪談物。
 
その解説をするのに、河竹先生は、日本の夏のじめじめした陽気を引き合いに出した。べとべとと肌にまとわりつくような湿った暑さ…。それがなければ、あの怪談は書けてはいない…と講義した。確かに。
 
歌舞伎評論家で演出家の武智鉄二や歌舞伎研究の第一人者だった、鳥越先生も同じ論調だったし、後に出会った鈴木忠も同じだった。そして、演劇科に進んだオレのかみさんが受けた講義、ガハハの和田勉も同じ意見だった。

じとじとした湿気と熱気は人を狂わせる。貼りつくように肌を伝う汗と臭い、そして、むせるような動かない空気…。人は恒常ではいられない。
 
近松浄瑠璃の名作で、オレが一番好きな「女殺油地獄」も、あのべとべとした油の中での殺しの場が一番の見せ所。女の血と油が混濁するという異様に猟奇的で、性的な殺人事件の現場を演出している。
 
和田演出は、それを松田優作小川知子というキャスティングで見事に映像化した。

その夏…。今年は何かそんな事件が起きるような予感がするのはオレだけだろうか。