秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

この国さえ、その危機の中にある

オバマ政権によるビン・ラーディンの暗殺…それが、いろいろな憶測や批判を生んでいる。
 
だが、この報道に触れたアメリカ国民の9割が今回の作戦に賛同している(この数字も操作されている可能性が高いが)。普通の感覚なら、今回の暗殺に違和感を覚え、もろ手を挙げて賛同するなどということはありえない。
 
しかし、これが米国民、並びにアメリカ政府の「いま」の実態だ。それを不思議に思ったり、なぜなのだ…と感じていしてまうのは、この国の精神世界や社会を仕切っているものに、人々があまりに無知だからだ。
 
「いま」という即物的な価値に重点を置く考え方は、アメリカの場合、まず、そのプロテスタンティズムによっている。現実主義、功利主義、実益主義。それを支える自由競争原理…。
 
これらは、産業革命をもたらした大きな動因でもあり、マックス・ウェーバーは、その著『産業革命プロテスタンティズム』で、近代合理主義がプロテスタンティズムによってもたらされたものであることをはるか以前に論破している。

カトリックの世界はローマ法王を頂点とした教会組織によって制約される…という大きな弊害もあるが、同時に、理想的共同体社会を目指すという点では、自由競争とは相容れない。ゆえに、リベラリズム、市民の自由とも整合性がとりにくい。そこの誕生したのが、市民の自由を第一とした、プロテスタンティズムだ。
 
この場合、市民の自由とは、神に召された先にある理想世界ではなく、「いま」という生活の中での充足を満たす自由を意味している。
 
アメリカという国は理想を求める国家であるがごとき、誤解を多くの人々が抱いてしまっているが、実は、超現実主義の国家。それは、理想主義を貫こうとして銃弾に倒れたリンカーンケネディなど暗殺された人々の姿を見れば一目瞭然。
 
アメリカでは理想より現実の価値の方がはるかに重い。現実のために、理想が邪魔になれば、どんな見え透いた工作でもそれを実施する。それほどに、理想に価値を置いていない。

しかも、それを資本としてユダヤが支えている。プロテスタンティズムは現実主義であるがゆえに、キリスト教の会派でありながら、キリスト教と対立していたユダヤと連携することに抵抗がない。ここに、アメリカの精神世界と現実主義、いいかれば、覇権主義が形づくられている。
 
オバマ政権は誕生当初、理想をいくつも謳いあげた。核廃絶、紛争地域からの米軍の撤退。環境への取り組み。そして、アメリカ経済=世界経済の復興…。だが、そのひとつも現実のものとできないでいる。理想が現実にならない。それは、オバマ政権の崩壊を意味している。場合によって、オバマの暗殺もありえる事態だった。

いまや病魔に侵され、アルカイダの実質的支配者でもなく、瀕死の状態に近い、ビン・ラーディンを暗殺する。それは、オバマ暗殺とのバーターともいえなくもないのだ。それによって、共和党支持に傾いている世論を引き寄せるという政治的陰謀でもあった。

また、9.11が本当にビン・ラーディンによるテロ事件であったのか…という現在も渦巻くブッシュ政権当時の疑惑とも無縁ではないだろう。いままで、アメリカ国内であまり検証されることのなかった9.11の実像への追及が、昨年辺りから、一部メディアによって拍車がかかっていたこともある。

この間の大統領年頭所感演説。そこにあったのは、共和党議員と民主党議員が席を分かたず、大同団結を示すように入り混じって着席していた姿だった。歴史上ない、異例の風景…。あの時点で、すでに今回のシナリオはできあがっていた…とオレは直感している。
 
共和党の失策を民主党が受け入れ、それを継承する…。そのバーターとして、当時ブッシュをはじめ、ネオコンの連中がアリバイとして必要だった、ビン・ラーディンの拘束。それを実現する必要に迫られていた…と考えるのが自然だろうと思う。
 
パキスタン軍は、ビン・ラーディンの娘を拘束し、事情聴取をした。そこに語られているのは、アメリカ政府の報道とはまったく別のものだった。抵抗はなく、一旦、ビン・ラーディンは拘束されたが、家族の目の前で銃殺された…というものだ。
 
ビン・ラーディンを裁判にかけるということで表に出てしまう何かがそこにあった。
 
ッシュ政権時代から、ビン・ラーディンは、拘束のために追われていたのではなく、殺害される必要があって追われていた。それは、彼が単に、国際テロ組織をつくり、指揮していた男だから…という以上の意味があったからだ。
 
それは、いま北アフリカ、中東、リビアで展開している革命闘争とも無縁ではない。
アメリカは中東のその後と抱き合わせでそれをやっている。
 
批判するもの、駆逐すべきもの…それをひとつに集約することで、大衆は容易に煽動される…。それは、ただ、アメリカ一国のことだけだろうか。いまのこの国さえ、その危機の中にある。