地球という悲しい星
風聞によるとムバラク支持のデモに参加すると法外な報酬が与えられているらしい。当然、そこには、現体制が維持されることを望む警察、公安をはじめ、これまでムバラク政権下で甘い汁を吸っていた連中が率先して市民を組織しているということもあるだろう。
前近代的な政府、政権、権力者が反対勢力に常套手段で用いるのは、このデモ崩し。右翼と名を借りたエセ右翼の暴力団を使い、スト崩しをやるというのは、かつての炭鉱でいえば、あの麻生炭鉱がよく使った手。ご存じのとおり、その末裔が元首相の麻生太郎。
60年安保のときも、70年安保のときも、学生運動では体育会系といわれるエセ右翼がそれを代行したし、労働組織では、まさにムバラクがやった方法で、経営者側が新たな労組を組織させ、そこに暴力団を忍ばせて弾圧するということをやった。
一見、市民や労働者同士で対立しているように見せる。実は、世論やマスコミの目を意識したカムフラージュだ。
エジプトをはじめ、北アフリカの国、地域は、欧米の金持ちたちがリゾートでよく利用する。オイルマネーと低賃金労働に支えれてつくられた高級リゾートホテルに宿泊し、地元住民などとても食べることのできない高級食材やサービスを満喫して過ごす。
すぐ近くのイタリア、フランスなど近代国家、民主主義の国に住み、リゾートを楽しみながら、その人々は、北アフリカがどんな国々なのか、どのような社会矛盾、格差を抱えているか知るよしもない。無知であることが罪であるという自覚もなく。
ドバイなどアラブ首長国連邦もそれ。高層ビルの下で、その末端労働を支えていたのは、紛争で食い詰めたアフガニスタンからの出稼ぎの男たちだ。低賃金労働と劣悪な労働条件によって建てられた高層ビルで、人々はスパに通い、午後のお茶をしている。
食うためには、人としての矜持やプライドを捨て、欧米の金持ち夫人たちの慰みものになる。もちろん、慰みものという意識もなく、隷従と従順が金を得る手段であるのなら、どんなことでもやるという生活の現実が優先しているだろう。
が、しかし。この国、日本の人々の多くは、世界を見るというとき、あるいはグローバルというとき、その対象となるのはEUとアメリカ。この数年になってやっと中国やインドといった急成長のアジアのいくつかの国しかみない。
無知であることは罪ではない。知ろうとしないことが罪なのだ。意見はいろいろあっていい。しかし、現実を知らず、意見を語ることが罪なのだ。
世界は欧米だけをいうのではない。中国や韓国だけをいうのではない。オレたちは、いま同じ地球という悲しい星に生まれ、その悲しみを共に生きている。
どの国、民族とも無縁では生きれない、密接さの中で、生きている。