秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

THE PROTESTER

TIMEの年末号(新年号)の表紙。毎年、その年の話題になった人物が総決算として表紙を飾る。
 
この数年でも、黒人初の大統領オバマソーシャルネットワークの新しい地平を拓いたFB創立者マーク・ザッカーバーグ。それが今年の表紙は、特定できないアフガンなどイスラム圏のだれか…のような顔のイラストになっている。
 
その固有名詞は、THE PROTESTER。抗議活動に参加する人。
 
いうまでもなく、北アフリカの市民行動によって既存の政権が二つも倒れ、それは中東アジアにまで広がった。アメリカのウォール街やイギリスのロンドンでは反格差運動の市民が街を占拠するという抗議運動が起きた。ブッシュが始めたアフガン、イラクへの侵略はアメリカの傀儡政権に対する抵抗が収まらない。タイ、ミャンマーの政情は安定してはいない。中国や北朝鮮では国内に市民蜂起といういくつもの爆弾を抱えている。
 
国や地域によって、そのPROTESTERたちの抗議行動の要因はさまざまだが、一致しているのは、これまで制度やシステムにがんじがらめにされ、反権力、反制度への行動を抑えつけられていた人々が自由の自己獲得のために立ち上がったという事実だ。
 
しかも、かつてのように社会主義によって疲弊した国や開発途上国、貧困国においてのみ起きているのではなく、こうした革命的運動が起きるはずはないと思われたいた自由主義経済大国のアメリカ、イギリス、フランス、ドイツでも起きていることだ。

それをTIMEは鋭く時代の顔にした。この国のチャらいマスコミとは大違い。世界の動向、国の未来がどこにあるのか、しっかりとらえている。
 
かつて、ベルリンの壁がこわれ、ソ連がロシアへと変貌と遂げる過程には、その運動を牽引するリーダーが既存政権や組織した労働組合の中から登場した。
 
しかし、いま世界で起きている運動は、そうしたこれまでの抗議行動や運動とは違い、トップダウンのようなリーダーがいない。CIAやKGB、旧MI6のSISが工作活動によってその動向をコントロールしたり、支配できる明確なリーダーがいない。ゆえに、欧米の思惑、世界の予想を越えた市民運動になっている。
 
この極東の島国では、依然、政治に対して、終わってしまったリーダー像を求める声が国民の中にある。マスコミは、政治のていたらくをいいながら、リーダーがいないと嘆く。おろかな話だ。
 
いまや、リーダーは長く続き、劣化した既存の政治世界の中にいるのではない。市民の中から、ボトムアップのように登場してくる時代に大転換している。その手法や志向性はともかく、大坂維新の会の躍進は始まりの始まりに過ぎない。
始まりの始まりといったのは、リーダー待望論によって誕生した新たな試みは、舵とりを少しでも間違えると市民の待望論を裏切り、挫折すると、簡単に駆逐されるからだ。小泉、竹中が見事にその姿を生きている。
 
いま世界で起きていることは、極東の島国の人々が考えるより、より市民の生活に根差している。すべてにおいて優秀とされ、人々を幸せに導く道と先進国によって確信されていた自由主義経済がすでに終わった。EUギリシャ危機やイタリア危機に直面しながらも、EUの枠組みを守ろうとするのは、かつてのリベラリズムでは一国の経済すら成り立たないことを経験的によく知っているからだ。
 
社会主義的枠組み、いいかえれば、共同主義を導入しなければ、先進国といえども国の経済が成り立たない。一人勝ちしたところで、隣国、周辺国との連携なしに、自国の経済も市民生活も成立しない時代に入っていることをよく知っている。

そうした時代の流れを読み取り、自らの中にある自由への自己獲得の要求をどう生活につなげ、行動できるのか…極東の島国は震災によってそれを突きつけられている。
イメージ 1