秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

二日でクランクアップ

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昨日は、朝4時におき、午後8時半にクランクアップ。自宅兼事務所に戻ったのは、10時。自主制作ということで、通常、4日間かかる撮影を2日で片付ける。

だが、その分、スタッフの負担は大きい。おそらく、これができるのは、秀嶋組くらいだと思う。通常3人一チームの仕事を、チーフひとりで片付ける。手が足りなければ、空いているものが手を貸す。年齢が上、立場が上だからと現場でふんぞり返っていられる奴は一人もいない。

それでいて、時間をかけていないわけではない。段取りと手際の勝負。それができるのは、経験に裏づけられた抽斗の多さ。

秀嶋組の現場で怒鳴ることはほとんどないオレだが、俳優への配慮や気遣いがないとキレル。ま、キレてもジョークでやんわりで済むときはそうするが、昨日は、恫喝。それでも、オレの意としていることがわかれば、スタッフは全面的に納得する。

スタッフの多くは、俳優の生理や俳優の仕事の内実がよく見えない。以前、ある助監督が、こういう演出、動きはどうだろうと、オレにアピールしたことがある。アピールして、こうした方がもっといいのではと、提案することは、否定しないし、いくらでも聴く。

が、しかし。そのアホな助監督は、俳優の腕をつかみ、こう動かして、こうでは? と、まるで、俳優を物や道具のように扱っている。当然、オレは激烈にキレル。著名な俳優なら、決してしないことを、そこそこのキャリアしかないと見下すと、平気でそういうことをする、バカがいる。

そうした中から、もしかすると、成長する俳優や伸びる俳優が出てくるかもしれない。そうではなくても、演出をつける人間の品性や品格の底が見えて、スタッフも俳優もついてこなくなる。やったとしても、心がついてこなければ、いい作品などできはしないのだ。その自分の愚かさに無知で鈍感。

「芝居をつくる」というのがオレたちの仕事であり、その芝居がいいできばえとなることがオレたちの願い。そいつのしていることは、俳優に辛い思いをさせ、場の空気を悪くし、かつ、助監督にだれもついていけなくてして、「芝居をつくる」仕事の妨害をしているのと同じなのだ。

だから、オレの現場では、俳優が、人間がそこにいて、人の眼にさらされて、それでも何事かを表現しようとする仕事への配慮や尊敬は、絶対最低限の条件。オレの現場での琴線だ。それを、忘れると昨夜のように、たまに檄が飛ぶ。

秀嶋組は忘れないのだが、そのときは、カットがかかり、俳優が緊張を緩めていると勘違いした。それで、スタッフ同士で、技術的な段取りをしようとして、俳優を忘れていた。それに気づいているオレの気づきが、奴らに見えなかったのだ。

一昨日は俳優として登場し、昨日は助監督として、手伝わせた長部が、帰り道、「監督は、どうして怒ったんですか?」と、事情がわからず、聴いてきた。一言で説明するのは、難しい。芝居と俳優の生理をもっと勉強し、芝居をつくる側に、しかも、真摯につろうする意志を持った立場になれば、すぐにわかる。

しかし、そんなこんなも、またいい経験。オレがそうして怒鳴ったくらい、今回もいい仕事をさせてもらった。

これまでの啓発物の作品の中では、いろいろ反省点もあるが、たぶん、随一のできばえだと思う。

演出をし、本を書ける人間は、オレだけだから、だれも気づいていないが、それができた最大の要因は、やはり、吉川奈穂。相手役の俳優たちが、ことごとく、これまで見せたことのない、いい芝居をしている。

本人がしっかり本を読んで、心をつくってきたということもあるが、それ以上に、彼女の芝居が、そのよさを引き出してくれているのだ。年齢が若いから、それと気づいていないが、長く芝居をやってきたオレには、はっきりと見える。

芝居は、アンサンブル。俳優と俳優で核反応を起こす。一人、うまい俳優がいると、それが経験の浅い俳優や未熟な俳優に核反応を起こし、光輝く。

彼女には、先天的ともいえる、その才能がある。

二宮聡、真田あゆみは、裏切らない演技。

口をすぼめる癖が直っていなかった、内田。テイクを重ねるほど、余剰な芝居が増える赤沼。長ゼリフが苦手で、入っていなかった水月は、後日、お仕置き。