秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

秀嶋組打ち合わせ

自主作品のカット割をギリギリ書き上げ、秀嶋組恒例の撮影前のスタッフ会議。

照明のS、カメラマンのHは、2月の遅ればせ新年会に参加できなかったから、主要秀嶋組が揃ったのは、今年初。仕事で遅れるといっていた、ヘアメイクのHもそう遅くない時間に合流した。

普段、冗談や下ネタ、戯言ばかりの秀嶋組だが、事前打ち合わせは冗談を飛ばしながらも、マジ。オレの意図を読み取り、自分の仕事をどう片付けなくてはいけないかを自分で探る。

何度か紹介しているが、秀嶋組では、どんな意見や考えも自由に発言できる。立場がどうの、年齢がどうのは一切関係ない。技術的なことばかりでなく、作品の演出や芝居についても意見を出し合う。よければ、オレも自分の考えに固執しない。

そんなことを重ねていくうちに、いつか家族や幼馴染のようになっていった。仕事については、予算や時間の都合もあるが、クオリティにこだわろうという強い意志を全員が持っている。みんな人のいい奴ばかりだから、それで損をしたり、苦労している。が、しかし。だからこそ、同じ意志、同じ願いを持つ強さが秀嶋組にはある。

弱小であっても、その強さは、どこの組にも負けないと、オレは確信しているし、彼らを誇りに思っている。そうした確信と誇りを抱かせてくれる奴らに、感謝している。

会議が終われば、いつも酒。以前の事務所と違い、手狭になった事務所で、乾き物で飲む。秀嶋組は、実は、これが一番似合っている。

照明のSは、長く別居中だったかみさんが病気になり、再び同居するようになったらしい。再熱したとか、愛が蘇ったとかいう、ありがちなことではなく、奴の矜持として、死にも至る病を抱えた元女房に、いまは添って、支えることが、自分のやるべきことだと考えたのだ。

Sは、障害を持って生まれ、いじめなどにも遭い、しかし、それを克服した。人の弱さや辛さがわかる。そういう奴なのだ。

この間、結婚したばかりのヘアメイクのHは、来月、婦人科系の病気の治療で手術をする。子どもを生みたいからだ。

20代後半の若さで、六本木に美容室を起こし、スタッフ20人近くを使う。事業に失敗した親の借金を肩代わりし、がむしゃらに働いてきた。オレと会うときは、安心だからだが、実は、かわいいだけの女だ。それが、仕事の場では、土佐の女の気骨で、意地になってがんばっている。

それが甘えられる男と出会った。甘えればいいものを、主婦業も完璧にやろうとする。かわいい女だからだ。ショー、テレビ、映画、店。そして経営者をやりながら、それでも主婦としても完璧を目指す。自分を甘やかさない。そんなにきばるな。オレが奴にいう言葉はいつも決まっている。かわいいことを知っているからだ。

助監督のYは、いつも酒だけ。メシはほとんど食わない。貧乏に耐えられるからだになっているからさ。とか、Yさんが貧乏しゃなくなったら、Yさんじゃなくなるよ。などと、秀嶋組では一番年上のYさんを平気でいじる。本来は監督としても仕事をする年長の男が、秀嶋組で、喜んで助監督をやってくれている。

こんな勝手な奴とは仕事したくない。こんな奴の顔は見たくない。いつも、オレにそういいながら、いつも、秀嶋組の仕事には駆けつけてくれる。

技術会社を経営するOとは、27年以上の付き合い。オレの会社がやばくなって、未払いができてもじっと待っている。予算のない仕事では、こうしたらどうかとアイディアを出す。

会議でも、現場でもよくしゃべる。知らない奴はそのしゃべりすぎが気に入らなくなる。だが、奴は秀嶋組の仕事が楽しいのだ。元は、映画ばかりの仕事をしていた。それだけは食えないから、テレビにシフトした。それでも映画の血を忘れていない。だから、秀嶋組の仕事は、うれしい。それが奴を饒舌にする。

カメラマンのHは、ある意味、スキューバーのために仕事をしている。秀嶋組NO1の愛妻家。そして、秀嶋組の良心。口数は超少ないが、人を見る力、人を察知する力はすごい。現場で揉め事があっても、Hは、周囲の対立する意見に耳を貸し、いい落とし所で、まとめる。まとめられるのは、奴の人柄だということをみんな知っている。

アシスタントをやらせているSは、もともとオレの客。それがいま舎弟になった。管理職で超忙しいのに、秀嶋組の仕事を手伝えるときは顔を出す。秀嶋組の輪にいられることを喜んでくれている。

ルックスもいい男だし、仕事もできる奴なのだが、実生活の生き方で、どこか孤独を感じている。一人っ子だったということもあるだろう。人と深く結びつく温かに飢えていて、オレと出会ったことを本気で喜んで、いつも気にかけている。

そんな奴らと、映画のことから、いまの社会のこと、男と女のこと、生活のこと、ぶっちゃけで語る。奴らも語る。投げかける。

帰って行く奴らの背中に、心の中で手を合わせる。