秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

動じない男

新しいオフィスの不動産管理会社の担当、Kさんを誘い、Redでランチ。

契約の折など、あれこれ雑談をする中、部屋のよさもあったが、どうしてKさんの人柄や雰囲気に誘われて、このオフィスを選ぶ動機になったかが、話を重ねるほどに、わかってくる。

Kさんのおふくろさんは、オレと同世代。いわば、オレの例のおばさん同級生仲間と同じで、その息子と仕事をしているようなもの。だから、団塊でもなく、新人類でもなかった、オレたち世代が子どもに伝えたことを、彼もどこかで受け止めている。そんな気がした。

Kさんの夢は、将来、農業をやること。出身が千葉の田舎ということもあるのだろうが、渋谷や六本木は実は苦手。人ごみや喧騒は嫌いだという。つまり、いま風のチャラけた都会は性に合わないらしい。ミッドタウンの前にある不動産会社に勤めがら、ほとんど都心の遊びスポットを知らない。興味がないらしい。

それでいて、契約のときにオレが机の上に置いたシステム手帳をめざとく見つけて、「いい手帳ですね。どこのブランドですか?」と聴いてくる。

なかなかやるなと、思った。流行や喧騒は嫌いでも、都会的なセンスやいいものを見抜く力は、ちゃんと持っている。

Redの棚に並ぶボトルを見ながら話をしていると、酒はモルトウィスキーが好きだという。いまどきの若い男子で、そう言い切る奴は、久しぶりに見た。仕事柄、オレのようによくわからない業界人と飲む機会が多いせいもあるだろう。

だが、いい大人にきっといい勉強をさせてもらっている。オレも若い頃、そういう先輩連中に男を教えてもらったし、好きな作家や雑誌の中で、男を磨いた。いまは死語になってしまったが、いわゆる、ダンディズム。

Kさんには、まだ自覚はないかもしれないが、その勉強をしたがっているし、している。ふと、Kさんがバーガーを食いながらいった。「いろいろな方を見ていて、自分もアイテムを身につけなくては、そう思います。がんばります」。

海外での生活も経験したく、英語も勉強しなくては…。そんなことを仕事で出会うオヤジたちの姿から学んでいる。彼は、きっといい男、いいビジネスマンに育っていく、そう思う。若いながら、落ち着きがあり、仕事になると実に冷静だ。言葉遣いも修練されている。

男にとって大事なのは動じない心。普段はできていなくても、いざ鎌倉というとき、大きな試練のとき、それができる男は、実はなかなかいない。いわゆる土壇場で腹をくくれる奴だ。

オレなどはKさんに比べたら、未熟で、いつも、オロオロしたり、キレたりしている。自分にないそうした魅力を持った人は、年下でも気持ちがいい。ふと、オレの息子とKさんは似ているかもしれないなと思う。

オレが息子を世界で一番尊敬していると、あちこちでいっているのは親バカなのもあるだろうが、心から、オレよりできた奴だと尊敬しているからだ。動じない強さは、オレの比ではない。

この前、移転を知らせたわけでもないのに、金沢のMから久々の連絡があったが、昨日は、かつて、外苑前で「わっしょい」という店をやっていた現代美術家の在日の親友からメールがあった。いまは、ロスのトレランスに住んでいる。

最近、コメントの内容が変わってきたな…。もう25年の付き合いになる、年上の団塊世代の親友に見抜かれる。オレがいま何を目指そうとしているかが、奴は直感でわかっているに違いにない。

言うまでもない。もっともっと自分を修練して、動じない男になることだ。