秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

第一印象

昨日、午後、引越しであちこち飛び回っている中、一服入れようと表参道の珈琲店大坊に顔を出す。

偶然、隣の席に、女子マラソンの草分け、オリンピックメダリストのAさんがいて、大坊さんと戯言をいっているうちに目が合い、軽く挨拶。一人で珈琲を楽しみに来ているのだろうからと、あえて、話しかけなかったが、なんとなしに、それぞれが大坊さんと話す会話に聴き入りながら、互いの話に笑い合う。

タンザニアで、子どもたちとハーフマラソンを走るというAさんの話に、ふと、この間、新年会をやったNGOの事務局長Kさんのことが頭をよぎる。Aさんと同じく、日経ウーマン大賞もとったこともあるKさん。最近はNHKなどのテレビ出演も多い。

これは、世界の紛争地や貧困国に対して、何ができ、何をやるべきか、などといったテーマでトークショーをやったらおもしろいかもしれない、などと、仕事の企画を思いつく。丁度、アフガンを舞台にした映画の企画を提出していることもあった。

MOVEというオレが主宰しているミニシンポに、二人に登場してもらうのはどうだろうと思いついてしまったのだ。正規のルートでは、とても高いギャラは払えないから、個人のレベルで参加してもらうのが一番。今日のところは抑えて、次回、大坊さんを通して、お願いする手もあるな、などと知恵をめぐらす。

仕事をやる上でのネタや企画は、いろいろなところにころがっている。しかし、その点を線に結びつけるためには、やはり、いろいろな人に会い、出会いを大事にし、生かすということが必要だ。

最初は、何の結びつきも、関係も見えなかったそれぞれの出会いを線としてつなぐためには、初見での印象が大事。第一印象というのは、それくらい重い。

もちろん、第一印象はすごく悪かったが、知り合う内に、それが友情に変ったり、恋が始まったりすることはある。だが、すごく悪いという印象を植え付けたことが、知り合う動機になっている。つまり、なにがしか、相手にインパクトを与えることが必要なのだ。

何をしている人なのだろう、この人は何者?という興味は、好感度とは関係ない。相手をコンフューズさせ、未知の領域を印象付けると、人は、好き嫌いは別にして、相手に興味を抱く。それは初見の出会いを忘れさせない。

その抱いてくれた印象を大事に育てていくことだ。自分の知らない相手の未知の情報、相手の知らない自分にある未知の情報が、そこには必要。だから、専門性の高い情報を自分自身が持つことが必要になるし、相手の未知な情報にリンクできる、自分の知識の広がりが必要。

つまりは、普段から学習と修練、未知の知識への吸収欲が求められる。しかし、いまはそれがない、あるいは、それをしない人が多い。

母校の校友会から、毎月、校友会誌の学報が送られてくる。昨日、送られてきた2月号の巻頭コメントに、女優の秋吉久美子の文章が載っていた。

うむむ。秋吉久美子? どうして?と、プロフィールを読むと、彼女、なんと二年前にうちの大学の大学院修士課程に入学し、公共経営研究科を修了していた。文化人類学の視点から公共経営を学ぼうと思ったらしい。これには驚いた。

フィールドワーク、現地調査も若い学生たちに混じってやり、研究発表もチームを組んでやったという。

笑ったのは、合格して、修士クラスでの初顔合わせのとき、「エンターテイメント業界に従事しておりました。専門分野はセクシー系です」と、自己紹介し、だれも笑わなかったというくだり。

しかし、そのしっかりした文章から、仕事の合間をみつけて、睡眠時間も減らし、本気で勉強していた姿が浮ぶ。もともと才気のある人だし、オレ自身ファンでもあった人。しかし、いつもどこか飄々としているから、まさか、大学院で勉強しているとは想像もしていなかった。

人が何事かを学ぶのに、遅すぎるということはない。新しい学習が、また新しい人との出会いも生む。

オレはW大を出て、その学歴が利用できる会社にも、仕事にもつかなかった。だから、社会的な意味で、W大を出たことは何の役にも立っていないかもしれない。

しかし、そこで学べたことをいまも誇りに思っているし、そこで学んだことが大きな財産になっていると常に実感している。

オレに強くそう思わせているのは、学びによって、多くの人と知り合い、大学を出てからも、そこで得た知識を基礎にしながら、また新たな人たちと出会い、さらにたくさんの学びを得ることができたからだ。

人の第一印象をつくる力は、そんなところにある。