秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

浅草

昨夜は、年末から飲もうと話をしていた、得意先のYさんと浅草で飲む。

神谷バーあたりでどうかと話していたのだが、Yさんが最近知り合いに紹介されたという、ほど近い大衆割烹の店に入る。

いかにも浅草という店構えの、気の置けない店の雰囲気もよかったが、やたら魚がうまい。刺身の盛り合わせで一番安い、ちょいのせ、というのを頼んだが、ちょいのせどころか、しっかり二人前ある。

お薦めはと聞くと、うなぎの稚魚を蒲焼にして巻いたものが、うちでは一番出るという。これがオレは初。だが、蒲焼ほどしつこくなく、それでいて、うなぎの味がしっかりある。どんな酒にも合う、あて。

それに、いまでは貴重なくじらの刺身まである。ベーコンは?と聞くと、入荷がまちまちで、今日はないが、仕入れはするようにしているという。

Yさんは、オレと同じで、ウィスキー好き。自宅が茨城にあるYさんは、帰りを心配して、いつも酒量は抑え気味なのだが、オレが飲むのをわかっているから、ハイボールをやるなら、いっそボトルでとなる。女将さんも、たくさん飲むなら、ボトルを入れた方がトクだと薦める。

そうそう浅草にはこないのだが、ならばと入れるが、結局、店を出るまでに一本空けてしまった。

浅草恐るべしだ。昭和48年に開店したという店、割烹助六。店構えで侮るなかれ。魚もつまみも、実にうまい。亭主は無口で、実直だが、ちょいワル風に髪を染め、その色合いが、オシャレ。女将さんもしゃべりすぎず、ほどよい受け答え。それに料金が安い。ボトルを入れ、あれこれ食って、二人で1万いかない!

仕事のことから、プライベートのことまで、とりわけ、映画の話はいつものネタだが、考えれば、ひょんなことからYさんとは、定期的に飲むようになった。

管理職という立場上、スタッフやオレのような付き合いのある制作会社と個人的に飲むことは意図して避けているYさんが、関係者の中で、唯一、オレとは酒を付き合ってくれている。年が一つしか違わす、オレが企業の管理職経験があることで、話が合い、なにかと気遣いをいただいている。

引越しの話をすると、オヤジと同じことをいう。無駄をせず、見栄を張らず、等身大で仕事をすればいい。家族と一緒にいる時間は大事だ…。そういえば、堅実に生きる生き方は、うちのオヤジに似ている。学歴で苦労しながら、管理職になり、上層部にも大事にされているところも同じだ。

息子は逆に、オレに似たタイプらしい。まさに、オヤジとオレの関係。そして、オレと息子の関係。オレの息子は、福岡のオヤジのように堅実な生き方を尊敬している。結婚相手の理想は、鹿児島の義母だ。二人ともその話をすると喜んだが、要は、オレのように不確かな人生は生きたくないのだ。

Yさんがオヤジと似ているのは、もう一つ。自分は堅実な道を歩みながら、オレのような物づくりに本気な人間が好きだということ。本当に、ありがたいことに、オレの生き方や仕事を認めてくれている。苦言もいってくれる。認めながら、苦言をいってくれる人はなかなかいない。

この間、年末にYさんも、オレも認めている、KさんとRedで飲んだが、そのとき、Kさんが、酔いの勢いもあってだろうが、ぼくも秀嶋組のファンで、一員のつもりです、といってくれたことがあった。ふっと言葉にしてくれた一言だったが、実は、胸に染みていた。

その話をすると、Yさんも、ほかの人間とは飲もうとは思わない、ヒデさんだからだと、Kさんの気持ちに頷いてくれる。

そうそう飲み歩くことはできないが、節々にこうして仕事を離れて飲む中で、思いを通わすことのできる仲間がいることは、どれほど心強く、ありがたいことか。

結局、久々泥酔し、外苑前まで電車を乗り過ごす。駅について、何年ぶりか、下呂するほど酔っていた。

昨夜は、常連新年会をRedでやっていた。上がりの早いYさんとの酒だから、その後、立ち寄ろうとも考えていたが、さすがに昨夜は、限界。限界まで飲むなど久々のこと。どこか学生時代の同級生と飲んでいる気さくさがあったからだと思う。

いまは、オレの仕事も試練と岐路にある。そうした中で、YさんやKさんのように思いをかけてくれる人がいることは、本当にありがたい。

一つ一つの言葉に感謝し、一人ひとりの思いを糧にし、自分のあり方を振り返り、道を切り拓こう…。